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「爆烈お父さん」が気付けば“朝の顔”に――『めちゃイケ』の葛藤

<長期休養から復帰した岡村は、風貌とともに以前のストイックなキャラクターも少し変わって戻ってきたように感じられた。そんな彼の復帰は、番組にどんな影響をもたらしたのだろうか。>

 それまでは勤勉で真面目でパーフェクトだった岡村が、矢部の表現を借りると「ちょっとポンコツ」になって戻ってきた。ところがこのことで彼は逆に一層の国民性みたいなものを得たような気がします。「ちょっと応援してあげなきゃ」みたいな。おかしな言い方ですけど、岡村がずっと健康だったら『めちゃイケ』はここからさらに8年も続かなかったのかもしれません。

「今になって考えてみると“岡村の休養”も“山本の離脱”も順風満帆でやや平和ボケしていた『めちゃイケ』が気を引き締め、必死になれた事件だった」と片岡は振り返った

<『めちゃイケ』が長く続いていく中で、ナインティナインはもとより、他のメンバーたちもそれぞれテレビの中で大きな存在へと成長していった。それぞれが独り立ちし、自身の番組を持つようになった者も。中でも加藤浩次は日本テレビの帯番組『スッキリ』(2006年~現在)のMCを務めるようになり、“朝の顔”となっていった。そうしたメンバーの変化は『めちゃイケ』になにか影響を与えたのだろうか>

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 本人たちの中ではきっと昔から何も変わっていないと思うんですよ。ところが長く続いていく中で、何者でもない若造が集まった非常にゲリラ的な番組だったのに、いつぐらいからか、ふと気付くと、「世の中では、これがテレビの真ん中になっている…?」と焦ったことがありました。たとえば加藤浩次なんて本来はチンピラで不良。初対面のときにツッパってサングラスを外さないアウトローだったのに(→#5)。いや、きっと今でもその魂は持っているんです。

 けど、世間が見る加藤浩次というのは毎朝ネクタイを締めて正論を説く加藤浩次になっていく。僕らも「爆烈お父さん」なんかで加藤の根っこの部分をなんとか見せ続けようと思ってましたが、彼が“狂犬芸人”として暴れれば暴れるほど、そのキャラクターに逆に違和感を持つ人も増えていったような…。

ゲストの些細な発言で逆上し、ジャイアントスイングでお仕置きする番組最長寿コーナー「爆烈お父さん」。国民的人気アイドルの頭を蹴るなど、コンプライアンス的にもたびたび物議を醸した ©フジテレビ

 僕からすると『スッキリ』でのニュースに本気で怒っている彼と、「爆烈お父さん」でアイドルにブチ切れている彼はどちらもそんなに変わらない、加藤なりの正義なんです。でも毎朝のイメージにどんどん上書きされて、彼はやや捻れながらも大人のタレントの階段をのぼっていった。