フジテレビ・チーフゼネラルプロデューサー片岡飛鳥氏のロングインタビュー第9回。今回も人気のテレビっ子ライター・てれびのスキマさんがじっくり聞きます。(全11回の9回目/#1#2#3#4#5#6#7#8#10#11公開中)

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濱口や紗理奈から反対された新メンバー加入

<片岡飛鳥は、2009年から2014年、人事異動で直接的には『めちゃイケ』の総監督を離れた。そんな中で2010年7月、岡村隆史が体調を崩し、長期休養することになった。それを受け『めちゃイケ』では全国規模の「新メンバーオーディション」が実施された。プロアマ不問で約1万人が参加。芸人のジャルジャルとたんぽぽ、タレントの重盛さと美、モデルの敦士、そして唯一の一般人(当時)だった三中元克が合格した。>

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 これも振り返るのはとても辛い思い出ですが、「奇跡を呼ぶ男」といって僕が彼を追い詰めたのも一因かと思っています。岡村は真面目で、タスクを実現することにすごく長けている反面、とても神経質でネガティブなところもある。心身ともにタフな「オファーシリーズ」(→#2#7#8)ではそれこそ日本中からその頑張りを期待されるようになって……もう成功して当然みたいに。長年『めちゃイケ』を背負って努力を続けてきた彼は、きっと孤独で辛かったんだろうと責任を感じていました。

フジテレビ・チーフゼネラルプロデューサー片岡飛鳥氏

 さらに「岡村の神輿を担ぐ」メンバー(→#8)も、その神輿に担ぐ目玉がいなくなった段階で、どうしたらいいか分からなくなってしまった。神輿は岡村の代わりなら誰でも乗れるわけではなく、適性、適材が求められるポジション。「空席になった神輿の上に乗せる“新たな人”を作らないといけない」と思った僕が新メンバーを入れようと言い出したんです。本当は僕も凹んでいるし、泣きたかったんだけど、そういう顔はみんなの前ではできない。努めて平然と説明していたからか、たくさん反対もされました。ピュアな濱口や紗理奈からは特に反対された。「新メンバーじゃなくて、なんで僕らが頑張るんじゃいけないんですか?」と。でも、何度も言いますけど、大師匠の三宅(恵介 ※1)の教えは「辛い時こそ笑いに変える」ですから(→#7)。今こそ守らないで攻めていないと番組が終わっちゃうと思っていました。

 山本がいなくなったとき(→#1)もとても辛かったけど、1人残された加藤の物語は悲しくも面白い。山本のことは許せなくても、加藤を男にしようという方向にならみんな一致団結する。だから岡村がいなくなったときも、「岡村がいない『めちゃイケ』をなんとかしよう」と声をあげるメンバーの物語をテレビにしようと思っていました。ただ、やっぱり岡村の場合は、番組の看板だから。ど真ん中にいた人がいなくなるっていう前例はなかなかないので、心の中では打ち切りの覚悟を持ちながらみんなと向き合ってましたね。

全国4都市(東京、大阪、仙台、福岡)で行われたオーディション。東京会場はこのお台場のフジテレビ。片岡によると「余談ですけど、当時まだ宮崎県で謹慎していた山本が東京にオーディションを受けにきて、予選の『めちゃイケ○×クイズ』で不正解して落ちてました(笑)」 ©フジテレビ
1カ月以上かけて4次審査まで行われ、晴れて5組が合格。メンバーの背後のイラストは当時『めちゃイケ』の危機に応援メッセージをくれた漫画家の尾田栄一郎氏によるもの ©フジテレビ

 僕はあんまり視聴率の話をするのが得意ではないんだけど、やっぱりテレビというのは、画面の中の熱が映る。苦しい時にがんばっているみんなの放つ熱が伝わったのか、「新メンバーオーディション」の数字は、岡村不在にもかかわらず18.8%でした。小数点まで忘れないです(笑)。ただ、その体力がどこまで続くかわからない。ジャルジャルやたんぽぽに入ってもらったけど、この先どうなるかはまったくわからなかった。