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ネット世論操作によって生まれるエセ民主主義

 つい先日、アメリカのシンクタンク大西洋評議会が公開したレポート「民主主義国におけるネット世論操作:ラテンアメリカのサイバー空間正常化の必要性(3月28日)」(註7)によれば昨年ラテンアメリカ3カ国で行われた大統領選などの重要な選挙のすべてでネット世論操作が行われ、その結果、極論を主張する国家元首が3カ国で誕生した。このレポートでは、2018年に起きたことは言わば前哨戦に過ぎないとしている。2019年つまり今年は世界で80以上の選挙が行われる予定で、そのほとんどが国政を左右するものだ。ここでネット世論操作が行われて極論の国家が増加すれば国際社会にとって深刻な脅威となる。

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 民主主義は選挙によって殺されるのだ。選挙によって選ばれた国家元首が独裁者になり、形だけ民主主義のエセ民主主義国家に変貌する。その過程は『民主主義の死に方 二極化する政治が招く独裁への道』(スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット)に詳しく書かれている。

「民主主義を殺した共犯者になります」

 日本の近くの東南アジアでも選挙によって選ばれた国家元首が民主主義を殺す事態が起きている。フィリピンやカンボジアでは政治家がネット世論操作戦略専門家を雇って世論操作を行うのが当たり前だ。フィリピンのドゥテルテ大統領は2016年の選挙の際、影響力のあるブロガーやボットなどを利用したり、20万ドルをかけて「キーボードアーミー」と呼ばれる実行部隊を組織するなど、大々的なネット世論操作を行って当選した。カンボジアでは対立する野党の党首をフェイクニュースで国家反逆を企んだとして逮捕、投獄した。

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 これらの国ではフェイスブック、WhatsApp、ツイッターの利用者が多く、これらを利用してフェイクニュースの拡散や世論操作が行われている。ここでもフェイスブックは大活躍しているのだが、やはりこうした事態に有効な手を打てておらず問題となっている。

 そして日本も同様に批判されている。カンボジアで野党(CNRP)が強制的に解散させられ、党首が投獄された時、党首の長女は世界に向けてこう訴えた。

「#CNRPは公式に解散しました。EU、日本、オーストラリア、そしてアメリカ合衆国は選挙への協力を取りやめるべきです。さもなければ #Cambodia の民主主義を殺した共犯者になります」(註8)