ノーベル平和賞受賞者であり、日本でもよく知られたアウンサンスーチー氏に国際的な批判が高まっている。パリではパリ市名誉市民称号を剥奪され、オックスフォード市も同様に名誉市民号を剥奪し、カナダも名誉市民の称号を剥奪した。アムネスティ・インターナショナルは同氏の「良心の大使賞」を取り消した。
一方、こうした国際的な批判とは真逆に日本の河野外相はアウンサンスーチー氏と会談し、支援を約束した。国連でロヒンギャ迫害非難決議を採択した時には142カ国が賛成する中、日本は棄権した。また、自衛隊はミャンマー国軍と交流を続けている。
深刻化するロヒンギャへの「民族浄化」
背景を説明しよう。ミャンマーではロヒンギャという少数民族への虐待、虐殺の問題が深刻化しており、約70万人が国外脱出する事態になっている。前述の国連決議はこれに対するものであり、虐待の主体であるミャンマー国軍の行動を「民族浄化」と糾弾している。
ロヒンギャへの「民族浄化」は軍によって行われている。ミャンマーでは政府が軍を制御できない仕組みになっているので、国家顧問であるアウンサンスーチー氏には軍の暴走を止めることができない。それでも軍を批判し、止める努力を行うことは可能なはずだが、あまり積極的に行っていないことが批判の的となっている。
日本得意の責任逃れの自己責任論
同様にミャンマー政府およびミャンマー国軍を支援する日本も批判されている。2018年9月18日のディプロマット誌には「日本の恥ずかしいミャンマー抱き込み(Japan's Shameful Myanmar Embrace)」(註1)とまで書かれてしまった。ミャンマー防衛省のページ(註2)に掲載されている内容の通りだとすれば、自衛隊が会談した相手は、ミャンマー国軍の最高司令官であるミンアウンフライン氏で、虐待、虐殺を進めている張本人だ。そんな相手と協力関係を強めるのは批判されて当然だ。
日本は同地区の経済権益を確保するために、中国(ミャンマー政府を強く支持)とのバランスに配慮しながらミャンマーとの関係を維持しており、人権や人命には配慮していないと思われても仕方がない。金は出すから厄介ごとはその国で解決してほしいという、日本得意の責任逃れの自己責任論にしか見えない。