昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

フレディ・マーキュリー、ダーウィン……発達障害の特性を生かした天才たち

新書『天才と発達障害』より転載

2019/04/22

 既成の概念を打ち破る仕事を成し遂げた天才たちをみると、普通の人とは大きく異なる精神構造をもっていた人がきわめて多い。これは数々の医学的データから明らかになっている。『天才と発達障害』(文春新書)では「創造性」「才能」がいったいどのようにして生まれてくるのかを、誰もが知る天才たちを具体的にあげながら、精神医学的見地から解き明かしている。

◆◆◆

ロックスター・フレディ・マーキュリーのやり方

 天才とは、あるいは傑出した才能とは、何を意味しているのだろうか。彼らはどういった人たちで、どのように人生を過ごしてきたのだろう?

 2018年に公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』で再評価されたクイーンには、『キラー・クイーン』という往年のヒット曲がある。「殺し屋の女王」とは、何のことか?

 じつはこの作品は「男殺しの美女」をテーマにしたものであるが、ポップソングとは思えない、わけの分からない歌詞である。モエ・エ・シャンドン、マリー・アントワネット、フルシチョフ、ケネディといった単語が散りばめられ、リスナーは混乱し、面食らう。だが、当初は受け入れ難いと思いながらも、ついその世界に魅せられてしまう……これが天才のやり方なのである。

 この曲の作者で、バンドの中心メンバーであったフレディ・マーキュリーは、言うまでもなくロック界の大スターだ。彼の傑出した才能は、天才と称えられるべき斬新さとパワーを伴っていた。

©getty

エルトン・ジョンが「正気か」と酷評したあの名曲

 フレディの生涯はアップダウンの激しい、息つく暇もない駆け足の人生だった。インド出身のパールシー(ゾロアスター教徒)を両親とするフレディは、1946年、タンザニアに生まれた。その後、ボンベイ(現・ムンバイ)の英国流の寄宿学校をへて、ロンドンの美術関係の大学でグラフィックデザインを学びながら音楽活動を開始した。

『キラー・クイーン』に限らず、彼の作り出した楽曲は、予想もしない衝撃を与えるものが多い。世界の音楽シーンに「異物」として出現したクイーンは、多くのファンに支持されたが、批評家からは冷たくあしらわれた。映画のタイトルにもなった『ボヘミアン・ラプソディ』は、当時のプロデューサーは冗長過ぎてヒットするはずがないと言い、エルトン・ジョンも正気かと酷評した。ところが発表から40年以上が経った現在でも、クラシックの要素を取り入れたこの作品は、色あせることのない新鮮さを持っている。