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うつ病に抗い続けた人生を送ったテネシー・ウィリアムズ
米国を代表する劇作家、テネシー・ウィリアムズは、まさにそうした人物だった。彼の『欲望という名の電車』などの作品は国際的にも評価が高く、現在でも繰り返し上演されている。一方でウィリアムズ自身はひとところに落ち着くことができず、住居を転々とし、酒とドラッグに逃避して、「青い悪魔」と呼んだうつ病に抗い続ける人生を送った。彼は精神病院への入院も経験している。
さらに近代哲学の祖であるルネ・デカルトも、その一生は、生涯続いた漂泊の旅とともにあった。それはデカルト自らが望んだ生き方であったが、彼も1カ所に落ち着くことができない性格だった。オランダで軍隊に参加したデカルトは、その後も戦闘と刺激を求めてボヘミア、ドイツ、ハンガリー、バルト海沿岸とヨーロッパ中を遍歴した。
このようなセンセーション・シーキング(常に刺激を求める性質)は、マインド・ワンダリング(思考が拡散する傾向)とともに、天才や傑出した人たちが持つ特徴の一つであり、発達障害とも関連が大きい。
本書は、天才や傑出した異能を持つ人々について、さまざまな側面から検討を加えたものである。彼らの人生の軌跡をたどり、周囲の人々や社会との関係を探るとともに、発達障害や精神疾患の視点から論じた結果について述べていきたい。