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最初はわからなかったタモリさんの「臭いだろう?」

 ちょっと前に“変な番組”って表現をしたけど(→#6)、人から見たら「何、これ?」というのが僕は大事だと思うんです。たとえば「しりとり侍」のゲームが始まるときの「『フォッフォッ、フォフォフォ』って何だよ?」みたいな(笑)。最初は100人見て99人が「何、これ?」と言った後に、少しずつ「え、でも面白いじゃん」となっていくのが理想の反応のような気がして。逆に100人が最初からわかるものを作ろうとすると、さっきの「みんなが好きらしいよ」っていう“オリジナリティの放棄”に陥る気がしますね。

 昨年タモリさんが有働(由美子)さんと『news zero』で対談したときに「わからないことこそが面白い」って言ってましたよね。まさに真理だと思いました。人間、わかっていることはつまらない。

 ……そういえば僕がタモリさんに昔のいいともの遅刻(→#4)を謝りに行ったときに、六本木のウイスキーバーに連れて行ってもらったんです。あの人はウイスキーマニアだから。で、次から次へすすめられるままのものを飲んでいたんですけど、その中に「ボウモア」というとてもクセのあるウイスキーがあった。僕は飲んだことなかったんですけど、強烈な消毒液みたいな匂い。

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「何すかコレ?」って聞くと「臭いだろう?」ってタモリさんが言うんです。「でもこの臭さがいいんだよね~」って。もうコージー冨田ばりの言い方で(笑)。ただあまりの匂いに正直タモリさんの言っていることはわからなかった。ところが、その夜は他にも美味しいお酒をいっぱい飲んだけど、翌日になっておぼえていたのは、そのクセのある「ボウモア」の味だけだったんですよ。最初は「わっ、臭っ! 何これ?」と思ったはずなのに、今では若いスタッフに「この臭さがいいんだよ」ってすすめてる(笑)。いろんな蒸留所や年代で飲み比べたり、「アードべッグ」や「ラフロイグ」もすごく美味しいし、最初は「タリスカー」ぐらいから飲めば……あれ? 何の話でしたっけ(笑)?

「クセのある『ボウモア』しか印象に残らなかった」――タモリと片岡のウイスキーバーでのエピソードには番組を制作する者への大きなヒントが詰まっている