「テレビは、起こっていることを見せるんじゃなくて、起こりそうなことを見せればいい」
<『めちゃイケ』の最高視聴率は33.2%(2004年10月9日放送の「国立め茶の水女子大学付属高校抜き打ちテスト」&「数取団VS氣志團」)。この数字はテレビバラエティ史における歴代視聴率ベスト10で『8時だョ!全員集合』『欽ちゃんのどこまでやるの!?』『笑点』など錚々たるタイトルと肩を並べ第9位にランクインしている。しかし、最低視聴率が4.5%(16年1月30日放送の「サリナンデス!」)だった。いくら長い歴史があるといってもこれだけ振り幅がある番組は例がない。>
面白すぎるでしょ、29%ダウンは即終わらないとダメ(笑)。結局、今回のようにテレビ番組を振り返って語るのが難しいのは、視聴率っていうのはその時々の水物というか…まあ、少なくとも僕にとっては科学じゃないので。だから、もし今日も視聴率の話をしていたとすればそれはすべて後付けにすぎないんですよ。あくまでも自分が話せるのは、どうやって視聴率を獲ったのかじゃなくて、面白い番組を作るためにどんなことを考えていたか、ぐらいなんです。
ただひとつ、大先輩の言葉で印象的な表現があって、萩本欽一さんがどっかのインタビューで「テレビというのは、起こっていることを見せるんじゃなくて、起こりそうなことを見せればいい」って言ってたんですよ。ちょっと禅問答みたいですけど(笑)。僕としては、次に何かが起こる“かもしれない”というワクワク感を見せ続けるのがいいテレビなんだと勝手に理解した。欽ちゃんがわざわざ「素人」という不確定要素を使う理由もこのへんのような……「素人」はものすごい失敗をする“かもしれない”ですよね。
同じように「オファーシリーズ」では岡村の奇跡が起こる“かもしれない”。『イッテQ』のイモトさんの登山には危険がある“かもしれない”。あと年末の『絶対に笑ってはいけない○○』こそ、常に誰かが笑う“かもしれない”ってシステムですよね。
ただし、“かもしれない”って簡単にはマネできないんだと思います。なんと言えばいいか、その「かもしれない状態」に突入していく番組の現場には、あらゆる想定とか判断とか準備とか、たくさんの覚悟が必要で、そのあたりの演者やスタッフの熱量が画面から見ている人にも伝わるんだ!……とは信じています。ただし「サリナンデス!」に“かもしれない”は無かった(笑)……この視聴率はいつかナンチャンにも謝ります(笑)。
#11 「さんまさんを人間国宝に!」ネット時代にテレビディレクター片岡飛鳥が見る“新たな光”とは?(最終回) へ続く
#1 『めちゃイケ』片岡飛鳥の告白「山本圭壱との再会は最後の宿題だった」
#2 「岡村さん、『めちゃイケ』…終わります」 片岡飛鳥が“22年間の最後”を決意した日
#3 「早く紳助さん連れて来いよ!」 『ひょうきん族』で片岡飛鳥が怒鳴られ続けた新人時代
#4 「飛鳥さん、起きてください!」 『いいとも』8000回の歴史で唯一“やらかした”ディレクターに
#5 「160cmもないでしょ?」『めちゃイケ』片岡飛鳥と“無名の”岡村隆史、27年前の出会いとは
#6 「ブスをビジネスにする――光浦靖子は発明をした」『めちゃイケ』片岡飛鳥の回想
#7 「『めちゃイケ』はヤラセでしょ」という批判 フジ片岡飛鳥はどう考えてきたか
#8 「加藤のマラソンが間に合わない…」『27時間テレビ』片岡飛鳥がナイナイの前で泣いた日
#9 「僕が岡村を休養まで追い詰めた…」『めちゃイケ』
※1 小松純也…1967年生まれ。『ダウンタウンのごっつええ感じ』
聞き手・構成=てれびのスキマ(戸部田誠)
写真=文藝春秋(人物=松本輝一)