巨大スクリーンに50州の名前が次々と
大統領就任式イブの会場は首都ワシントンDCの「リンカーン記念堂」。トランプがみずから選んだ場所だ(ブライトバートニュース)。南北に分断したアメリカを統一し、いまでも歴代アメリカ大統領のなかでもっとも人気がある、リンカーン大統領にあやかっての選択だ。記念堂前に広がる人工池「リフレクティング・プール」の両横にある芝生の公園が野外特設会場だ。会場入りすると、各所に設置された巨大スクリーンに、アメリカ50州の名前が順に映し出されていた。就任式を明日にひかえ、全州の団結を象徴するメッセージだろうか。
その会場は、かつて人種差別撤廃を訴えるワシントン大行進が行われ、キング牧師が「私には夢がある」演説をした場所としても有名だ。
キング牧師のメッセージが「私には夢がある」なら、トランプにもメッセージがある。「アメリカを再び偉大に!」だ。就任式イブの公式テーマとして、このメッセージが記された垂れ幕があちこちで目につく。誰もが知るトランプの選挙スローガンであり、政権目標としても引き続き使われている。
会場に続々と集まる人だかりに聞いてみた。「Youは何しに?」。かえってくる答えはきまっている。「アメリカを再び偉大にする!」の決め台詞だ。そして、「トランプ! トランプ! トランプ!」の大コールが自然に沸き起こる。
空気を読まない歌でトランプ入場
催しにはアメリカを代表する軍楽隊や合唱団、カントリーソングの歌手やバンドが駆け付けた。
都市部の「セレブ」歌手や俳優の就任式関連イベントへの出演辞退が大きく報じられるなか、アメリカの独立精神と地方の人々の生活に根差したカントリーミュージックの旗手たちが結集したのだ。
演奏は記念堂前の特設ステージで行われた。冒頭、来賓のトランプ夫妻が手をつなぎ、ローリング・ストーンズの「ハート・オブ・ストーン」のサウンドトラックにのってステージに登場した。歌がついていれば、こんな詩だ。「たくさんの女たちと遊んできた…彼女のどこがほかの女の子とちがうかって? …わからないけど考えてみるよ…」。さすが空気を読まないトランプらしい入場曲だ。
トランプ夫妻のすぐそばには娘のイヴァンカ、その婿のクシュナーのほか、長男夫妻、次男夫妻など、トランプファミリーの面々も勢ぞろいしていた。
登場する歌手や曲によって、地方から駆け付けたトランプファンが埋め尽くす会場の盛り上がりはぜんぜんちがう。
最初に盛り上がった曲はカントリーミュージックのアーティスト、リー・グリーンウッドの代表曲『ゴッド・ブレス・ザ・USA』だ。
「ミネソタ州の湖からテネシー州の丘まで、テキサス州の平原を越えて…デトロイトからヒューストン、そしてニューヨークからロスアンゼルスまで、すべてのアメリカ人の心の中に誇りがある」
歌詞にミネソタ、テネシー、テキサスと地方名が出た瞬間に、会場から局所的に大きな歓声があがる。それぞれの出身地からのファンがかたまっているのがわかる。そしてサビの「アメリカ人であることに誇りを持つ!」がくると、会場全体が一体となり合唱する。モニター画面に映し出されるトランプも体を揺らしながら、口ずさんでいた。
そんな盛り上がった曲よりも、演奏の合間にトランプがちらっと映ったときにわきおこる歓声のほうがずっと大きい。みんなトランプをみにきているのだ。