文春オンライン
「マジンガーZ」や「デンジマン」の歌も……小池一夫のもうひとつの偉業

「マジンガーZ」や「デンジマン」の歌も……小池一夫のもうひとつの偉業

「子連れ狼」だけじゃない

2019/04/23
note

小池一夫のもう一つの“顔”

 そんな原作者・小池一夫には作詞家の顔もあった。大ヒットしたテレビ時代劇『子連れ狼』の主題歌も小池の作詞だ(小池一雄名義)。とりわけ吉田正・作曲、橋幸夫と若草児童合唱団の歌唱による第3部の主題歌「子連れ狼」は大ヒットした。なかでも「しとしとぴっちゃん」というフレーズは当時の流行語にもなったが、そぼ降る雨を擬音と効果音の口述で表現したそのフレーズは、同時に今日も父親の生還を信じて待つ幼い大五郎の心情をも表現しており、作家・小池一夫(雄)の底力を世に知らしめた。なお、歌詞の2番は「ひょうひょうしゅるる」で3番は「ぱきぱきぴきんこ」。それぞれ風と霜(氷)を表現していた。

第12回ローマ国際映画祭でレッドカーペットに立つマジンガーZと、原作者の永井豪さん ©時事通信社

 意外に知られていないのが『マジンガーZ』や『電子戦隊デンジマン』(’80年)などのアニメ・特撮の主題歌だ。そんなに数はないが、どれも今なお歌い継がれている名曲ばかり。『マジンガーZ』では副主題歌「ぼくらのマジンガーZ」(歌:水木一郎、コロムビアゆりかご会)と挿入歌「Zのテーマ」(歌:水木一郎)を作詞した。『マジンガーZ』は’72年に放送され、日本中に一大ロボットアニメーション・ブームを巻き起こした金字塔的作品。“超合金”という名の亜鉛合金製人形や全長1メートルはあろうビッグサイズの玩具「ジャンボマシンダー」は飛ぶように売れた。2018年には新作長編アニメーション映画も劇場公開され、その健在ぶりを示していた。そんな歴史的大ヒットアニメ作品の副主題歌、挿入歌の歌詞も小池一夫の筆によるものだったのだ。

完成度の高さゆえに……

ADVERTISEMENT

 じつは挿入歌「Zのテーマ」は当初、主題歌として作られたものが、その詞の完成度の高さゆえに“子供番組の主題歌としてはやや難解”との理由から挿入歌に変更されたという経緯を持つ。小池はそのときの経験を悔しく思い、続編の『グレートマジンガー』(’74年)では「子供にも分かりやすくパンチのある歌詞を」と心懸けて作詞に臨んだ。その結果、見事『マジンガーZ』に匹敵する大ヒット曲となって大いに喜んだ心情を後年自らのエッセイで吐露しており、なんとも微笑ましかった。この『グレートマジンガー』の主題歌「おれはグレートマジンガー」の歌詞では小池が生前一貫して訴え続けていた、“作品の命はキャラクターにあり”が体現されていて興味深い。タイトルどおり「おれは涙を流さない、ロボットだから、マシーンだから」と、主人公の操縦者・剣鉄也ではなく主役メカ・グレートマジンガーの一人称で詞が綴られており、まさしくグレートマジンガーがキャラ立ちしている。「必殺パワー! サンダーブレイク」等のスペックを歌って覚えられることで子供たちに好評を博し、当時は『マジンガーZ』の主題歌以上に大ヒットしたものだ。