成熟した男は住めない「アマゾネス家族」とは
内田 かなり具体的ですね。セックスは?
斎藤 家の外で。入居者が結婚しているかどうかは問わない。
内田 結婚そのものは大して意味がない、と。
斎藤 同棲でも、事実婚でも、相続権がパートナーに与えられればそれでいい。私のイメージするアマゾネス家族は、女性だけで、子供も一緒に暮らすんですけど、ある程度大きくなったら寮かなんかに入れて、成熟した男を入れない。
内田 男の人がいると、どうしても自分が大将みたいになりますものね。
斎藤 威張っていないともたないから。もともとは母子関係が家族関係の核なんです。そのうちに、あなたの家のケースのように恵まれない母子のもとにせっせと通ってくる男が現れる。
内田 生活の面倒をみてくれるようになって、家に君臨する……。
斎藤 歴史的にも、男の名前で家が乗っ取られているでしょう。キリスト教しかり、結局は男だけの系図が残る。
内田 女性から女性にいろいろ遺伝とか伝わるものがあるのに、男のほうが名前を出してきて威張っているという解釈でもいいでしょうか。
斎藤 なんかいつの間にかそうなってしまっただけなんです。歴史は女で作られるというけど、語り継ぐのは男ということになってしまっているんです。脳の構造的にも、男性の記憶力はあてにならないですよ。
私の提唱するアマゾネス家族ってまだ10年早いかもしれないと思っていたけど、理論的にも十分論議する価値があるでしょう。
内田 最後は貴重な提言まで……、本日はほんとうにありがとうございました。
斎藤学(さいとう さとる)
1941年東京都生まれ。家族機能研究所代表。医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長。過食-拒食症、アルコール・薬物・ギャンブルなどの嗜癖(依存症)問題に長年取り組み、多くの自助グループ・団体の誕生を支援。著書に『「自分のために生きていける」ということ』(だいわ文庫)他。最新刊『すべての罪悪感は無用です』(扶桑社)。
内田春菊(うちだ しゅんぎく)
1959年長崎県生まれ。84年に漫画家デビュー。93年発表の初めての小説『ファザーファッカー』が大ベストセラーとなり、漫画『私たちは繁殖している』とあわせて、第4回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。2018年大腸がんと人工肛門(ストーマ)生活について描いた『がんまんが』『すとまんが』を発表し、話題を呼ぶ。俳優、歌手でもある。