少し前から、インターネットで「義務教育の敗北」という言葉をたびたび目にするようになりました。
「何が敗北なんだろう?」と思い調べてみると、子育て中のママ向けサイトで「熱冷ましの新常識『キャベツ枕』! キャベツを頭にかぶせると、熱が下がり、体内の毒素を吸い取ってくれる」という記事が掲載され、それを安易に信じる人が後を絶たなかったり(現在記事は削除、お詫びもされています)、「妊婦が触って妊娠菌が付き、妊娠しやすくなる『妊娠米』」がメルカリで高額取引されたり(医薬品医療機器法[旧薬事法]に抵触する恐れがあるとして、現在は「妊娠菌」商品は削除されています)と、とんでもない情報が続々と出てきました。
SNSの登場によって可視化されやすくなった
確かにネットで簡単に情報が手に入る今の世の中は、正しい情報だけでなく「間違った情報」が入ってきやすい時代でもあり、私たちが肌で感じている「常識」は、相手にとっては「常識でない」可能性もあります。そう考えると、もはや「常識で考えたら分かるだろう」という一言で片付けてはいけないのかもしれません。
念のため付け加えると、私が言いたいのは「今の若者は常識がない」ということではありません。「医学的根拠のない民間療法を信じる人たちが一定層いる」という状況は今も昔も変わりませんし、「義務教育の敗北」問題は年齢とは関係がなく、単純にSNSの登場によって可視化されやすくなったり、間違った情報にリーチしてしまう人が増えたりしただけだと思うのです。
「ゆとり世代」が生まれるまで
こうした状況を見ているかぎり、今は「義務教育のあり方そのもの」をアップデートすべき時代に入っているように思えます。
そもそも「義務教育」とは、近代国家にとって「人権」「産業振興」の両面から「一人前」の国民を育てるための制度です。戦後は、子どもたちが全国のどの地域でも「一定の水準の教育」を受けられるようにするため、全国共通のカリキュラム(学習指導要領)が定められました。
学習指導要領は時代とともに改定されており、平成元年以降は生活科や「総合的な学習の時間」の新設、道徳教育の充実など「生きる力の育成」に重きを置いています。いわゆる「ゆとり世代」も、こうした流れの中で誕生しました。