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カープと被災地――災害ボランティアで気づいた“人と人を繋ぐ球団”がある喜び

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/06
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カープが生み出すもの

 時を経て、2018年。球団史上初となる「3連覇」を達成したカープは、全国のファン、なにより西日本豪雨災害で被災した広島に大きな大きな喜びを与えてくれました。すでに2連覇していたこともあって、ボランティアも被災された方も、かつてのような「3位が目標」ではなく「優勝が前提」だったので、当然ながら笑顔の多い日が増え、世間話も弾みます。

 夏から秋にかけ、被災したお宅の家財道具などを運び出す作業が増えた時期があったのですが、自分たちが行っていた地域は年配の方が多く、それこそ何十年と住まわれているお宅がほとんどで、タンスの中を片付けたりしていると、昔のカープのお宝グッズがどんどん出てくるんですよ。昭和50年に初優勝した時の新聞なんかもあるんですよ。そういうものが出てくる度に「おお!」とか「お母さん、これスゴい昔のヤツじゃないですか!」と盛り上がり、思い出話を聞かせてもらう。そして帰り際「じゃあ明日また続きをやりますね」と言うと、笑顔で「頑張ってもろうたけぇ、これ持って帰りんさい」。お宝グッズを惜しげもなくプレゼントしてくれたりするのです。それも1軒や2軒ではなく、何軒もの方が。

プレゼントで貰った缶切り ©ガル憎

 災害が起こらないに越したことはありません。広島土砂災害でも西日本豪雨でも、多くの尊い命が奪われました。自分はそれを真摯に受け止めて災害ボランティアを続けています。そして広島という街には、人々を勇気づける、幸せを与える、人と人を繋ぐ「話題」を与えるカープという存在、世代を超えて共有できるものがあります。カープを通じて人の温かさに触れることができます。犠牲になられた方々に心から哀悼の意を捧げると共に、世代も性別も超えて自分たちを繋いでくれる、ボランティアや復旧作業の中でも世間話の中心にいてくれるカープに心からお礼を言わせてください。本当にありがとう。あと、思ってもいなかったシーズンになっている気もしますが、4連覇、期待しています。

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