2014年の秋だったか、知り合いの女性カメラマンがオープンしたカフェに顔を出した。お店はご夫婦で営んでいるが、その日は旦那さんが居らず、店内は女性カメラマン、僕、もう一人の男性客の三人であった。久しぶりに会えた嬉しさか、なかなか顔を出せていない申し訳なさなのか、ずっとモノマネで喋る僕がいた。
女性カメラマン「それ誰のモノマネですか?」
かみじょう「平安高校野球部の原田英彦監督ですやん!」
女性カメラマン「誰がわかるねん(笑)」
かみじょう「皆、知ってるし!」
女性カメラマン「あれ? あんた平安の野球部出身やんなぁ?」
かみじょう「いや、俺は違うから(笑)」
女性カメラマン「ちゃうやん、ツヨシは確かそうやんな?」
「はぁい」
店内にいたもう一人の男性が答える。どうやら、偶然お店にいたもう一人の男性が平安の野球部出身だという。こんな偶然があるのか……。
浅村栄人に贈った曲「やんちゃ坊主」
話を聞くと野球部では3年生の夏、見事に甲子園出場しベスト8まで進出したのだという。「あの準々決勝で松山商業とやった時の平安の選手!?」。気づけば平安高校での厳しい練習の日々、僕の原田監督モノマネを野球部OBの皆さんも知ってくださっている事、甲子園でショートゴロに飛び出して挟まれた話など夢中になって聞いた。
女性カメラマン「あと、彼、今は歌手やってるんでまた応援してやって下さい」
これがミュージシャン「強」との出会いだった。
その後、僕がやっているラジオ番組にゲストで来てもらったり、強のライブにゲスト出演したりと交流を深めた。
そして2015年の3月だった、埼玉西武ライオンズの浅村栄斗選手へプレゼントする「やんちゃ坊主」という登場曲を作ったからと音源を頂いた。そして歌を聴いて二人の関係をはじめて知ったのだ。
負けるんじゃねぇぞ お前の夢は
かつて共に涙を流した 仲間達の夢だって事を
忘れんじゃねぇぞ
どんな偉くなっても お前らしくあれよ
まさかこんなカタチで巡り会うなんて思ってなかった
あん時は二十歳でお前はあどけなさの残る少年だった
それが今では野球選手 あん時のコーチが歌歌ってる
ホンマ人生って何が起こるか解らんもんやな
「やんちゃ坊主」の冒頭の部分である。歌詞に出てくるコーチが強氏で少年こそが浅村選手本人だという。そう、この歌は実際に大阪都島ボーイズ時代の浅村選手と当時コーチだった強氏の物語を歌ったものだったのだ。兄のおさがりのグローブで日が沈んでもノックを受けていた事、母が作る濃いめの焼きそばが大好物である事など、歌詞には子供の頃の浅村選手を垣間見る事ができる。