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――高校では多くのともだちができて、上京してからはますます明るいエピソードが増えていきますね。高校時代には、授業参観で誤って保護者にゴミをぶつけてしまうなど……他にも迷エピソードはあるのでしょうか。

七崎 あります、あります。たとえば、理科の実験で使うアルコールランプを倒してしまって、どういうわけかテーブル全体を燃え上がらせちゃうとか……。

 

――危なすぎる!

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七崎 かなり注意散漫なところがあるみたいで(笑)。でもそういったところを「面白いやつ」って思ってくれる子たちが周りにいて、徐々に自分を受け入れられるようになりました。

 上京してからは、中学・高校と男の子ばかり好きになって、失恋するのを繰り返していたので、仕方がない、自分は男性が好きなんだと認めようと。

 それから男性が好きな男性の掲示板を見るようになったのですが、びっくりしたことは、「ゲイの人ってこんなにいるんだ」ってこと。それまで、日本には美輪明宏さんだったり、その他数名しかゲイの人はいないのだろうと思っていたので(笑)、「これなら日本に数百人いるのでは?」と。

――実際はそれよりもずっといますよね。

七崎 LGBTQ全体で、人口全体の8%ほどいる、と言われています。40人のクラスだったら、3.2人という割合です。でも本当はそれよりもずっと、ずっと多いです。でも、当時はそれさえ知らなかった。

 それで、掲示板で知り合った人と会ってみて、もっと驚きました。芸能人とは違って、とにかく普通の人がものすごく多いんですよね。で、何も知らないポヤポヤの状態だから、「この人は僕の気持ちをわかってくれるんだ!」となって、そういう隙をつかれてすぐ性的な関係に持ち込まれちゃったりもするんですけど。

――ちょっと苦い初体験の話が、連載には出てきますよね。

七崎 後悔はしていません。けれど、もうちょっと素敵な初体験があったんじゃないかとは思いますね。女の子だったら「性的な関係になるときは、気をつけなきゃだめだよ」って散々言われると思うんですけど、男の子はそういうことを言われないですからね。

「当時、これがあったならば」

――今、「当時これがあったならば」と思うことはなんですか。

七崎 とにかくロールモデルがもっと欲しかった。さっきも言いましたが、自分はもう美輪さんみたくなるしかないと思ってたから……。

 

――ハードルが高いです。

七崎 美輪さんのお言葉には何度も救われたのですが、自分が美輪さんのようになる、となると……大変ですよね(笑)。それに、ゲイだってことは家庭を持つこともあきらめなきゃいけないんだって思い込んでたんですよ。こんな人も、あんな人もいるんだ、っていうのがもっと分かればよかったのにな、と思います。

 今回の連載も、当事者のロールモデルを増やしたいな、と思って書いたものです。読んで「うわ、コイツみたいにはなりたくないな」と思ってくれてもいい。いろいろな当事者がいるんだよってことが可視化されれば。