――セクシャルマイノリティの当事者として、非当事者に知ってほしいことはありますか。
七崎 相手が当事者かもしれないとか、この部屋の中に当事者がいるかもしれないって、ちょっと想像力を働かせてくれることで円滑に進むことが多いと思うんです。
たとえば、「彼女さんいるんですか?」って聞かれることがあります。僕は、「旦那さんがいます」ってストレートに返しちゃうんですけど(笑)、「彼女さん」じゃなくて「お付き合いしてる方」というような言い方をしてくれれば、「あ、この人に言っても嫌な思いはしないかも」と当事者は少しホッとすると思う。
今でも悔しいと思うこと
――最後に、いじめに悩んでいる若い人や、若いセクシャルマイノリティ当事者へのアドバイスはありますか。
七崎 アドバイスというのは、あまりしたくないんです。一対一の相談も、受けないようにしていて。
というのも、あるとき講演する機会があったときに、講演後に高校生の男の子に話しかけられたんですね。彼はゲイで、ある日友人にカミングアウトする決意を固めて登校したそうなんですが、その日の日本史の授業で先生が「このお殿様は男色家だった。気持ち悪いよね」と言って、教室で笑いが起きた、と。それで、友人にカミングアウトするのを諦めてしまった、どうすればあなたのように強くなれますか、と。
「僕も強い人間ではない、どうか自分が悪いとは思わないでほしい」というようなアドバイスをしたと思うんですが、その少し後、その子が自殺しちゃったことを知ったんですよ。
それからは、誰かに「相談に乗って欲しい」と言われても、相手がどういう思いで相談してきているのか、汲み取る自信がなくなってしまって。
――あまりにつらい話ですね。
七崎 僕が悔しいのは、
自分でも嫌な気持ちになる話ですが、 中学時代にいじめられていたとき、僕は呪術に頼ったんですよ。暴力じゃ勝てないから、オカルト系の本を読んで、呪術で相手を呪い殺せないかと思ったんです。
20代なかばになっても背後に人に立たれるとビクッとしてしまうくらい、中学時代は日常的に暴力をふるわれていました。だから、オカルト本を読み込むような負のエネルギーというか、念の強さがなかったら、当時を生き延びられなかったんじゃないかと思う部分もあります。
いじめを受けた経験があったり、ゲイだからといって、僕にはいまいじめを受けている子や、自分のセクシュアリティについて悩んでいる子たちの気持ちをすべてわかることはできません。気軽に「こうするといい」ということも、決して言えません。でも、自分のことをあまり悪く思わないで、自分なりの方法でなんとか生き延びて欲しいです。そして、周りの大人には、できるだけ、さまざまな可能性があるこ
――電子書籍は5月14日、書籍は5月28日発売です。
七崎 すでにネットで予約が始まっています。また、電子書籍については、この記事がアップされる4月26日に無料試し読み版もリリースされています。
それから、文春オンラインの連載は、もうしばらく続けます。さきほど少し触れましたが、自分がゲイであることを認めた瞬間から、僕の人生は大きく動いていきます。これからも楽しみにしていてください。そして是非、書籍も手にとっていただければと思っています。
写真=平松市聖/文藝春秋