――七崎さんは、2015年にパートナーと一緒に江戸川区役所に婚姻届を出していますが、受理されませんでした。事実婚や、パートナーシップ制度でいいじゃないか、という声に対してはどう思いますか。
七崎 そもそも、今の日本では同性間では事実婚はできないです。男女であれば「未届の夫」「未届の妻」というふうに認められます。僕たちもトライしてみたんですけど、断られてしまいました。
パートナーシップ制度も、法的効力はありません。僕とパートナーは分譲マンションに住んでいるんですが、2人の名義にはできなかったので、パートナーの名義で買って、僕が毎月ローンの半額分を支払っています。将来パートナーが先に亡くなった場合、このマンションがどうなるのかは謎です。法的な家族じゃないので相続もできないし、贈与という形だと100万単位で税金がかかってしまうし。
ほかにも、パートナーにもしも何かがあったとき、と考えると不安なことがいっぱいです。気軽に事実婚でいいじゃないか、パートナーシップでいいじゃないか、という人は、正直ちょっと無責任だと思います。
ゲイのカップルとして経験すること
――ゲイのカップルとしてオープンに過ごしているそうですね。
七崎 そうですね、ご近所付き合いも夫夫(ふうふ)としてしていますし。
――嫌な思いをすることはないのですか?
七崎 ピントのズレたことを言われることはいまだにあります。これまた、善意からきているのだろうな、というところが難しくて……。
たとえば、「同性愛はいいと思うけど、子どもは持たないでね」って。「子どもがあなたたちのせいでいじめられたら可哀想でしょう」って。子どもの話なんて一言もしてないのに。どんなカップルに対してだって、部外者が子どものことをずけずけ聞いたり、意見したりするのは失礼なことでしょう?
同性カップルに対してなら言っていいと思ってしまうというか、むしろ「忠告することが正しいことだ」とまで信じきっている人と出会うことが、たまにあります。
人生で一番緊張したカミングアウトが母に伝えるときだったんですが、母は最初、ゲイであることを親に知らせることは「甘え」だって言ったんです。
――「甘え」。
七崎 なんでわざわざ言ってくるんだ、私だって親に自分の性癖を知らせたことなんかない、って。
カミングアウトに理解があった周囲にも、親に知らせることは「わがままだ」、「自分がすっきりしたいだけでしょう」と止められました。まるでゲイであることがなにか危険なこと、おおっぴらに言っちゃいけないことかであるかのように思う人が多いみたいで。
でも、僕にとっては、男性が好きだっていうことは「血液型はO型です」っていうのと同じくらい自然なことで、むしろ隠すのが不自然なくらいなんですよ。普通に生活していて、お付き合いしている人や、パートナーの話題が出ることって多いじゃないですか。