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天皇皇后のお住まいを清掃するボランティア「皇居勤労奉仕」はなぜリピーターが多いのか

天皇皇后のご会釈、参加者限定アイテムの購入という楽しみも

2019/04/30
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「あの方はどうされましたか」ずっと心配される皇后

 勤労奉仕活動中のできごとは、逐一両陛下にご報告がいく。参加に年齢制限が設けられ、活動中に「とにかくムリしないで」と職員の方が気を配ってくれるのは、活動中に一人でも体調を崩す人がいると、皇后陛下が「あの方はどうされましたか」と後々までずっとご心配くださるからだという。東日本大震災発生時、帰宅困難となった勤労奉仕団が、「窓明館」(皇居内にある、勤労奉仕団が説明を聞いたり、活動開始までの休憩に使ったりする講堂のようなスペース)で宿泊したそうだが、これも国民を心配する皇后陛下のご配慮だったそうだ。ルールを破ることは、宮内庁職員の方々にご迷惑をおかけするだけでなく、両陛下にご心配をおかけすることにもつながるので、絶対にやめたい。

皇居にて 宮内庁提供

 4日間のスケジュールはおおむねこのような流れで行われる。

 8時 入門

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 9時 説明開始(皇居の場合「窓明館」にて)

 9時半頃~ 午前の部 開始(清掃場所へ移動)

 11時前 午前の部終了 

 11時半~13時 昼食、休憩

 13時半頃~ 午後の部 開始(清掃場所へ移動)

 15時半頃 終了

 16時 退門

ボ~っとしていると「〇〇奉仕団の方」と注意も

 昼食は各団がそれぞれ自分たちで手配することになっている。最初に私が参加した時は、立派な塗りの箱のお弁当に、温かいみそ汁付きの豪華なお弁当が用意されていて「さすが宮内庁!」と思ったら、ほかの団のお弁当だったということがあった(もちろん、宮内庁は一切関与していない)。各自がお弁当を持参する団もあるが、空き容器を引き取ってくれる業者にまとめて宅配を依頼する団体も多い。4日間「同じ釜の飯」を食べ、結束を強めるという意味もあるのかもしれない。

筆者が参加した奉仕団は赤パーカを着用(団によって異なる)©文藝春秋

 昼食時は、宮内庁職員の方が「お茶係」として、やかんとお茶と湯のみと台拭きを「御貸し」くださる。毎日各団から3人係を決めて受け取りに行き、お借りしたやかんでお昼にお茶を入れる。テーブルを拭いてきれいにし、洗ってからお返しする一連の流れは、同じ3人が最後まで責任を持つ。1人でもできそうな作業だが、「縦に3人並んで揃ったら作業開始」と決まっていて、3人そろわないと始められない。返す時間も決められているため、ボ~ッとしてると「〇〇奉仕団の方」と、注意されてしまう。大人になってこのように団体行動を強いられるのは、日常生活でも精神面でもいい刺激になるのではないかと思う。