「お元気で」「ありがとう」――。皇居勤労奉仕に参加する多くの人々が「最大の楽しみ」としている「ご会釈」。平成までは今上天皇皇后両陛下と、皇太子殿下によることが多かったが、令和においては、新天皇皇后両陛下と秋篠宮皇嗣同妃両殿下になるのかどうか、さまざまな憶測が飛び交っている。そもそも皇居勤労奉仕団に何度も参加する人が多いのはなぜなのか。平成最後の勤労奉仕団に参加した人の話なども聞きながら、皇居勤労奉仕団について考えてみた。
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皇居勤労奉仕団の朝は早い。宮内庁へは朝8時に入門できるが、団員が全員そろわないと入門できないため、どの団体もだいたい朝7時半頃に皇居近くの公園などで集合してから桔梗門付近に移動する。
自然に頭を下げたくなる神聖な空間
冬はまだ真っ暗なうちに家を出なければならず気持ちが萎えるものの、早朝の皇居はいつもにもまして清々しく、桔梗門をくぐると、明らかに空気が変わるのも面白い。
都心とは思えない自然が広がり、清々しい空気が満ちているせいか、門を通る時に、神社の境内に入るようにお辞儀をしている方も多くいる。確かに、皇居内に立ち入る時は自然と頭を下げたくなる。この神聖さは、実際に皇居を訪れてみるとよくわかる。
皇居内は警備が行き届いているため、たとえ職員であっても「お天気がよいからちょっとそこまで」などと気軽な散策はできないという。各所に皇宮警察の待機所(交番)が設置されていて、何時だれが通るかがすべてチェックされている。センサーも通っているので、誰かがうっかりフェンスを触ったりすると、どこからともなく皇宮警察が駆けつけてくる。勤労奉仕の際には身分証明書の携帯が求められるが、運転免許証を持っていない私は、4日間パスポートを持ち歩いた。外国人か。
勤労奉仕では広い皇居内をとにかく歩く。移動時は4列縦隊を組んで進むこととされ、作業中の写真撮影や携帯電話での通話はできない。敷地内では時間厳守も徹底されているが、「ついうっかり」写真を撮ったり、携帯で通話をしたりするマナーの悪い人が最近はいるという。敷地内の砂利石を「記念に」と持ち帰りそうになった人もいたそうだ。参加団体による温度差も広がっているようで、作業開始前に宮内庁が「作業中のメール、通話はお控えください」と注意をうながさなければいけなくなったと聞く。