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天皇がお育てになった稲の穂を手作業で脱穀

 勤労奉仕の作業内容は季節やタイミングによって変わる。通常は草取りや落ち葉の清掃などが多いが、陛下が水田でお育てになった稲の穂を、次回の田植えのために品種ごとに手作業で脱穀することや、園遊会後の池の敷石を袋詰めすることもある。また、皇后陛下のご養蚕のための桑の木の枝集めなど、その時の人数や天候、季節などによって宮内庁庭園課の方が判断する。

陛下がお田植えされる水田 宮内庁提供

植物は「自然のままに」

 皇居内では一般参観できる東御苑も含め、農薬類は一切使われていない。昭和天皇からのご意向により、皇居内では自然のままに存在することが意識され、できるだけ手をかけない形での管理が行われている。「実」のなる木が多いのは、自然のままに鳥についばんでもらい、種が広がり、動物たちのエサにもなることを陛下が望んでおられるからだという。しかし、年々職員と予算が削られているため、最近は手が回らないことが増えてきた、と宮内庁関係者は言う。皇居勤労奉仕の存在は、そういった意味でも貴重だといえる。

©文藝春秋

「ご会釈」のためのリハーサル

「ご会釈」が入る日は、その分作業時間が減ることになるが、どのタイミングでご会釈があるか(または、ないか)は、直前までわからない。

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 ご会釈は、説明とリハーサルで30~40分、ご会釈で10~15分、待機・お見送り・移動で10~15分の1時間ほどで、おおむね午後に行われる。私が参加した時は、天皇皇后両陛下のご会釈は宮内庁庁舎北側にある蓮池参集所という小さな平屋の建物で行われた。「こんな場所に本当に両陛下がいらっしゃるのか」と思うほど簡素な建物だった。

 予定時間の1時間ほど前に蓮池参集所に移動し、ボディチェックを受けたあと、各団体の団長を先頭に3~4列に並ぶよう指示される。移動の際は、部屋の真ん中は両陛下が歩かれるので、端を歩くように言われた。

 まずご会釈の流れを聞き、職員の方の説明を聞きながらリハーサルを行う。「決まった場所を動かないように」「団長以外の方は声を出さないように」「具合の悪い方はいないか」など、しつこいくらいに確認される。