2、藤井聡太の最年少デビューおよび29連勝達成
平成の最後、まさに将棋界を変える超新星が誕生した。加藤一二三が昭和29年に14歳7ヵ月で四段昇段を果たしてから、中学生棋士は谷川、羽生、渡辺の3名が続いたが、加藤の最年少記録は長らく破られなかった。
だが平成28年、藤井聡太が14歳2ヵ月で四段昇段を果たし、62年ぶりに加藤の年少記録を更新したのだ。同年12月に行われた藤井のデビュー戦の相手が、加藤だったのも大きく注目された。
年齢差62の対局を制した藤井は公式戦最年少勝利(14歳5ヵ月)を記録し、以降も白星を重ね続けることで、自らを中心とするフィーバーを生み出した。
その頂点が平成29年6月26日だろう。ここまでデビューから負けなしの28連勝だった藤井は、この日も増田康宏を破り、29連勝を達成。神谷広志が昭和62年に作った公式戦28連勝の記録を30年ぶりに塗り替えたのだ。1局当たりの勝率を7割で計算しても28連勝の実現確率は0.005%しかないのだから、連勝記録がどれほど不滅のものと思われていたか、お分かりいただけるだろうか。
佐々木勇気に敗れて連勝記録は29で止まったが、その後も藤井は全棋士参加棋戦である朝日杯将棋オープンを連覇し、また記録四部門(対局数、勝ち数、勝率、連勝)でも羽生以来の独占を果たすなど、大棋士への道を着実に歩み続けている。
3、羽生のタイトル99期及び一般棋戦優勝45回
昭和の大棋士である大山康晴はタイトル獲得が80期、一般棋戦優勝は44回という数字を残している。この数字は長年にわたって更新不可能な記録と思われていたが、平成24年に羽生が81期目のタイトルを獲得し、ついに更新される時がきた。
その後も羽生はタイトル戦で勝ち続けて99期まで積み重ねたが、100期を前にした平成30年の竜王戦で広瀬章人に敗れて大記録達成ならず、27年ぶりに無冠へ転落してしまった。
だがそれで終わらないのが羽生である。平成31年3月に放映されたNHK杯決勝では郷田真隆を破って一般棋戦の優勝回数を45とし、こちらでも大山の記録を更新した。
現役の第2位が谷川のタイトル27期、一般棋戦22回であることを考えても、この記録はしばらく破られないことは間違いない。タイトルの方は八冠王を実現してもそれを12年以上続ける必要があるし、一般棋戦のほうでもほぼ同様の年月がかかるのだ。