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「面白いものを作る“だけ”の人だと思われていた」

三浦 僕は、博報堂に入社した最初はマーケティングで、その後PRの部署を経たあとにクリエイティブディレクターになっているので、いわゆるマーケティングのプロセス全体を見てきたことが強みになっています。クリエイターという商売はCMやポスターを作ることに終始していて、クライアントの事業の成長に対して全くコミットできていない。ものが売れてないことに対して関知してないような空気に全然納得できなかったんです。

 若い頃、僕の作ったCMの商品がうまくいかなくて終売になったことがあって、クライアントさんに、「気にしないでください、いいCM作っていただいて感謝してます」って言われたんです。先輩たちも「あのCM面白かったもん、いいもの作れたよね」って言っていたのに愕然とした。やっぱり責められてしかるべきだし、僕らは面白いものを作るだけの人だと思われていたことにすごくショックを受けた。僕はクリエイターと企業のコラボレーションで社会に新しい価値を生み出すことにこそ意味があると思っていたから、クリエイティビティを軸にした事業成長のサポートはできるんじゃないかという仮説を立てて、それを検証したくなったんです。

©深野未季/文藝春秋

三浦 それを大手の会社でやろうと思ったら新しい部署を作るのに何年もかかるし、大企業で自分の部署を作って1年で業績立たなかったら「どうなってんだ」って責められるじゃないですか。スタートアップってそういうものじゃない。損を掘り続けて金を当てるみたいな部分、我慢比べの側面もある。いろんな意味で会社の体質やスピード感に合わなかったんです。

――「クリエイティブディレクター3.0」のコンセプトもその過程で出てきたのでしょうか。

三浦 はい、僕の見立てとしては、90年代までのクリエイティブディレクターの役割はいわゆる「CM制作」。企業と生活者のコミュニケーション手段がほぼそれしかなかった時代に広告をつくる仕事を「クリエイティブディレクター1.0」とするなら、次の時代には、映像だけではなく、イベントやデジタルの施策も組み合わせた「統合プロモーション」が求められるようになった。これが「クリエイティブディレクター2.0」です。

 そしてこれからは、企業と生活者のコミュニケーションが多様化している時代に、クリエイティビティを軸に「プロダクトやサービスといった事業を開発・成長させる」プロフェッショナルとしての「クリエイティブディレクター3.0」が求められると考えています。僕のポリシーは、「作品を作るのではなくて現象を作るのが仕事だ」。作品を作って満足するのではなく、その先にある、作品が世の中に届いて、世の中を変えるところまでデザインすることがクリエイティビティの価値証明になると思うんですよ。