昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

導入企業300社、総会員数5万人となった「シェアオフィス事業」

――事業クリエイティブの試みとして具体的にどんなものがあるか、教えていただけますか。

三浦 わかりやすいのは三井不動産のシェアオフィス事業ですね。GOの立ち上げ時に三井不動産からシェアオフィス事業をやりたいというお話があって、アメリカのWeWorkのような優れたシェアオフィス事業があるなかで新規参入するのはなかなか難しい状況でした。僕らのひとつの仕事の仕方として、その企業とか事業の価値を徹底的に話し合います。なぜ三井不動産は世の中に必要なのか、なぜシェアオフィス事業をやらなきゃいけないんだということを話し合った結果、普通の人に働き方改革はできないっていう課題があると思ったんです。働き方改革で時間も場所も自由に働けって言われたって、現実には女性だったら子供ができても在宅勤務とか現実的にはなかなかできないでしょう。

――本当にそうですね(笑)。

三浦 お題目でどれだけ言われても普通の人に働き方改革はできない。WeWorkはクリエイターとかアーティストとかスタートアップとかイケてる人のためのもので、大企業はWeWorkなんか使わない。でも世の中の大半は一般企業にいるわけで、普通の人の働き方改革が必要だと思ったんですね。それこそが三井不動産がやるべきことだと思ったんです。

 そこで、B to B契約で三井不動産と契約した企業の社員が、全国に30ヶ所(現在は40ヶ所)のシェアオフィスが自由に使えるというサービスを展開しました。自由な時間に好きな場所に出勤して入退出は全部スマホで管理できて、ひとりひとりが自分のワークスタイルをデザインできるワークスタイリング事業を打ち出しました。この事業コンセプトを一緒に作り、プロモーションやPRも含めてご一緒させていただいて、非常にうまくいった例です。いまや導入企業300社、総会員数5万人のサービスにまで成長しました。

――素晴らしい成功例ですね。中小企業の事例ではなにかありますか?

選ばれたオーディオブックが毎月2冊届き、簡単に読書を体験

三浦 最近の事例でひとついうと、オーディオブックといって本を朗読した音声コンテンツを売るオトバンクという会社からご相談を受けて僕らが作ったのが、「オーディオブックキャンプ」という企業の研修素材です。日本のビジネスパーソンの8割くらいが本当はもっと本を読みたいが、忙しくて読めないという読書離反層ですが、そうなるタイミングは新社会人になるときなので、そこに目で読むよりも、耳で聞く方が簡単に読書を体験できるというメリットがあるオーディオブックを差し込めばいいというアイディアを提案しました。さらにBtoB事業にすることで継続性を高められる。企業単位で契約していただくと、社員全員にメディアや金融、人事など各ジャンルの専門家が選んだオーディオブックが毎月2冊届く、本のサブスクリプションサービスです。リリースして間もないですが、すごく伸びていて、企業の人事の方を中心にご好評いただいています。これもプロダクトをサービス化してるんですよ。本1冊1冊売るというプロダクトビジネスを、企業研修用に毎月届くというサービス業に変えた例です。

――事業クリエイティブとは新しい可能性を感じる試みですね。広告の概念が変わります。

三浦 その企業の本来的な価値はなんだ? いま社会でどういう変化が起きているのか? そこを考えた上で、どういう変化がその企業に必要なんだろうって突き詰めた先に、それをポスターにするかCMにするか新規事業にするかの違いだけなんです。

 いまは業績が右肩下がりで多くの日本企業が苦戦しています。でも、冒頭の話じゃないけど、サッカーがうまい人は本当はラグビーだってアメフトだって強いんです。違うルールに対応さえできれば。サッカーで鍛えた心肺能力やスタミナは、アメフトでも必ず生きてきます。ようはスキルの使い方ひとつです。ただサッカーのドリブルだけでアメフトやってると当然ボールを取られちゃう、それを「卑怯だ」って言っても遅い。ルールの変化を察知して、一歩前に出たものが勝つ時代なんです。

©深野未季/文藝春秋

三浦 僕たちの社名のGOは、「いいから行けよ!」というのが語源。企業でも個人でも、「わけのわからないもの」を面白がって前に踏み出すことのできる人が令和という新時代を突き抜けていける。一緒に行こう、その先の未来へ――その変化と挑戦の日々がめちゃくちゃおもしろいことは保証します。

三浦崇宏(みうら・たかひろ) The Breakthrough Company GO 代表取締役、PR/Creative Director。1983年生まれ。博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年に独立。「表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事」が信条。日本PR大賞、カンヌライオンズPR部門ブロンズ・ヘルスケアPR部門ゴールド・プロダクトデザイン部門ブロンズ、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSイノベーション部門グランプリ/総務大臣賞など受賞多数。

この記事の写真(6枚)