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日本の7割よりも世界の2割を狙ったほうが市場は大きい

――技術革新の大きな波がさまざまな分野でのルールチェンジを進行させているんですね。

三浦 そうです。グローバル化という言葉は使い古されていますが、僕はいま起こっているのは「シームレス化」と見ています。世界と日本の差がなくなり、マーケット自体がいま溶け合ってきている。これまではマスとニッチという区分がありました。例えば国内では大新聞やテレビといったマスメディアに対して地方新聞などのローカルメディアという図式が成立していた。しかし、Netflixのような勢力が入ってくるとコンテンツがフラット化する。国内でのマスとニッチではなく、世界での「メガニッチとローカルニッチ」になるんです。要はある特定の価値観の人は世界中に沢山いて、日本の7割を狙うよりも世界の2割を狙ったほうが市場はデカい――そういう観点に切り替えたほうがいいと思います。

――シームレスな社会においては、ある価値観や嗜好性を共有する人をグローバル市場で狙い撃ちにしたほうがよいわけですね。

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三浦 たとえば、世界中には運転をしたくないけど車移動はしたいという人が一定の割合いる、それを狙ったのがUberでした。世界中の、旅行はしたいがいちいちきちんとしたホテルや旅館に泊まるのは面倒くさいというバックパッカーに最初狙いを定めたのがAirbnbだった。つまり日本市場で1位を獲るよりも、グローバル市場のニッチなニーズを獲ったほうが商売になる、この視点を持てるかがビジネスパーソンにとって分かれ道だと思っています。

©深野未季/文藝春秋

三浦 インターネットと移動インフラの進歩によって、世界は距離とか空間で分断されてた時代から、価値観と情報環境で分断される社会になってきています。たとえば、いま港区でクリエイティブ分野で働いている僕は、秋田県で農家をやっている方と、エストニアで知財に関する弁護士をやってる人がいるとしたら、たぶん、後者の人のほうが話が合うと思う。どっちがいいとかじゃなくてね。そういう価値観で人やお金が結びつく時代なんです。だから日本の市場のシェア7割とかをギリギリ凌ぎながら目指す余裕があるんだったら、世界の1割2割を目指すほうが企業として正しいし、それを最初に狙える企業がたくさんある国のほうが強いと思います。