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「日本の7割よりも世界の2割を獲りにいく」クリエイティブディレクターが語る日本企業再興戦略

クリエイティブディレクター・三浦崇宏インタビュー

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グローバルニッチを狙う日本企業の勝ち筋は?

――日本企業がグローバルニッチを狙ううえで大切なことは何でしょうか。

三浦 いまヒットしてるものはだいたいプロダクトをサービスとして捉えられてるところがうまくいっています。身近な例えからいうと、「NewsPicks」レーベルの単行本、本の中身は薄くても本を入り口に著者とTwitterでつながったり、著者や愛読者のコミュニティから情報をどんどん継続してもらえるわけです。『メモの魔力』を読み終わったあとも、前田裕二さんのTwitterで本には書かれていない『メモ魔』的な情報がどんどん更新されていく。つまり、本というプロダクトがある特定の価値観とか世界観とかコミュニティの入口になっている好例ですね。

 あるいはいま、VanMoofというオランダのめちゃめちゃイケてる電気自転車があって、世界各地でけっこう売れてるんですが、これは単なる自転車ではなく、スマホと指紋認証でつながっているから鍵かけが不要で、他の人が持って行こうとして動かすとサイレンが鳴るし、スマホで自転車の位置もすぐわかるから盗難の心配もありません。会員制のサービスが充実していて、ユーザー同士や企業とつながっているので、どんどんコミュニティができていくんですね。プロダクトを単体で売るのではなく、自転車を軸にしたサービスを提供しているんです。これもプロダクトとサービスのシームレス化です。

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©深野未季/文藝春秋

三浦 こういうサービスの発想において、日本人特有のおもてなし精神は非常に強みになると思います。GAFAが牛耳るマーケットの中でグローバルニッチを獲りに行く上では、日本ローカルのおもてなし精神が必ず差別化につながってきます。たとえば飛行機に乗ったときに日本では笑顔で「いらっしゃいませ」って言うし、ホテルでもリッツ・カールトンなどではお客様に「お帰りなさい」って言いますよね、そうしたひと言の違いってすごく大きい。おもてなしカルチャーをビジネスハックとしてグローバルに適応できるか? いわば、おもてなしという接客体験や空間デザインに関するテクノロジーをあらためて見直して、あらゆるプロダクトや事業のサービス性を高めていくことが日本企業の勝ち筋ではないかと思います。