“地元”は、“ヤンキー”と呼ばれるような若者にとって重要な場所だ。そこは彼らを支えるコミュニティだが、同時に彼らを閉じ込める監獄としても機能する。地元の温かさはしがらみと表裏一体である。
「沖縄嫌い、人も嫌い」。大学進学で沖縄にやってきた打越正行は、ひとりの若者が吐き捨てるように言った言葉に驚いた。それが、“ゆいまーる(相互扶助)”という方言に象徴される、沖縄のコミュニティの温かいイメージとはかけ離れたものだったからだ。そして、打越はその真意を知るべく、社会学者として10年以上にわたって、件(くだん)の若者のような沖縄のヤンキーたちを調査することになる。本書はそれをもとにして書かれたノンフィクション作品だ。
07年の夏の夜、沖縄の幹線道路である国道58号線、通称・ゴーパチにはたくさんの若者が集まっていた。大きな排気音を響かせる暴走族。沿道でそれを眺めるギャラリー。やがて警察がやってきて始まる追走劇に、場はさらに盛り上がっていく。打越は、近くのコンビニの前で休憩していた暴走族の若者たちに声をかけるところから調査を始めようとした。しかし、場違いな彼は、私服警官ではないかと警戒されてしまう。思うように調査が進まない中で打開策となったのが、“パシリ”になるという手法だ。