6700億円分の部品を日本企業から調達
海外で販売されていたZTE製のスマートフォンには米グーグルのOS「アンドロイド」が搭載されていたため、セキュリティアップデートすら実行できなくなるという混乱まであった。つまり今回の規制で、日本人消費者が保有するファーウェイのスマホでアップデートが止まり、セキュリティリスクにさらされるといったシナリオもありえそうだ。
昨年のZTEは、「再度違反行為があった時に没収される供託金を支払う」「経営陣を刷新する」との条件で制裁を解除されたが、今回の規制は前述のとおり、中国政府の指示によって情報の脆弱性を作り出しかねないことが規制の要因とされている。具体的な行動が問題ではないだけに、どうやれば米政府の疑念を解消できるのかは未知数だ。
ちなみにファーウェイは日本企業にとって大のお得意様だ。同社の発表によると、2017年には約4900億円、2018年には約6700億円分の部品を日本企業から調達したという。実に日本の対中輸出の4%に相当する。それだけに今回の規制は日本企業の懐をも直撃することになりそうだ。
プランBは「自社技術」での開発
現時点でのファーウェイの事業を見ると、米国の製品や技術が供給されなくなれば、ビジネスの継続は難しい。だが、その一方でこの危機を乗り越えようと死に物狂いで自社による技術開発に取り組むことになるだろう。中国にはその成功体験がある。
1950年代後半に中ソ対立が表面化すると、ソ連は技術顧問を引き上げたが、中国は自力でプロジェクトを完遂。「両弾一星」(原爆の保有、ICBMの開発、人工衛星打ち上げ成功)や南京長江大橋の建設に成功した。
今回の米中貿易摩擦でも、習近平総書記は2018年末に発表した新年の挨拶で、「どれだけ風に吹かれ波に打たれたとしても、自力更生を堅持し、刻苦奮闘しなければならない」と発言し、国産技術開発の推進で対抗する姿勢を示してきた。
さらにファーウェイは以前からこうした外圧を予想してきたと言われる。創業者の任正非は大の慎重派で、転ばぬ先の杖を用意しておくことに執心してきた。対抗策の1つが中核技術である半導体の開発だ。