ソフトバンクに買収された英ARM社が鍵を握る?
ファーウェイの子会社にして、半導体の開発を手がけるハイシリコンは2004年にファーウェイの開発部門から独立する形で創設された。監視カメラなどの処理装置から始まり、次第に性能を向上させ、2014年からはスマートフォンやタブレット向けの処理装置もリリースしている。最新のフラッグシップ・スマートフォン「Huawei P30」シリーズのSoC(シリコン・オン・チップ、プロセッサなど主要機能を一つのチップに集約した心臓部にあたる部品)であるKirin980は、米クアルコムのスナップドラゴン855に迫る性能を持っている。
実はKirin980のコアは、設計をソフトバンクに買収された英ARM社が設計している。そのARMは中国事業を合弁会社にしているが、2018年6月に合弁会社の株式のうち、51%を中国側に売却すると発表した。うがった見方をすれば米国との全面対立を予見して手を打っていたようにも見える。ARM以外にも米企業に依存している製造機械、部品、ソフトウェアはあり、これだけですべての危機を回避できるわけではないとはいえ、その危機対策には改めて驚かされる。しかも、スマートフォンだけではなく、サーバーや基地局などでもARM中心に移行しつつある。
「ファーウェイはOSの独自開発をしている」
またファーウェイはAIを次世代の基幹事業に定めているが、AIの開発では主要な地位を築いているNVIDIAのGPU(グラフィックプロセッシングユニット)やグーグルの機械学習ライブラリ「Tensorflow」(テンサーフロー)に依存しないよう、AIに必要なチップからソフトウェア、ライブラリまですべて自社で開発するフルスタックAI企業を標榜してきた。
さらに驚かされるのは自社でのOS開発だ。ハードウェアと並んで重要な要素となるのがOSだが、こちらもファーウェイは危機を予見して手を打っている。「ファーウェイは独自のOSを手がけている」との噂が広がるなか、今年3月、余承東・消費者向け端末事業グループCEOは「確かにOSの独自開発をしている」と認め、「このOSはプランBだ。アンドロイドやウインドウズをファーウェイが使えなくなる未来のためのね。もちろん、グーグルやマイクロソフトのエコシステムとの協力が続くことを望んでいるのだが」と続けた。
究極の「転ばぬ先の杖」であった自社OS開発が、日の目を見る時が近づいているようだ。