「特許」を取得している町役場は、極めて珍しい。ところが和歌山県みなべ町は2つも持っている。
うめ課が県内の大学などと共同研究を行ったところ、梅には胃ガン予防につながる成分、さらには糖尿病になりにくい物質が含まれていると分かり、それぞれの研究成果で特許を取ったのだ。
それだけではない。梅干しには食中毒予防、疲労回復、食欲増進、熱中症予防、インフルエンザウイルスに対する殺作用、高血圧予防に効果があることも共同研究で判明し、「現在は老化防止や認知症予防の研究を進めています」と、田中一朗・うめ課長は語る。
梅の健康効果が消費拡大につながり始めた
同町の国民健康保険の医療費は、県内市町村で最も安く、これとの関連性も研究中だ。
「ウメパワプラス」という商品がある。梅干しの疲労回復効果に注目し、運動選手が競技の合間などに食べられるようシート状に伸ばすなどしたものだ。町などで作る「紀州梅の会」が開発した。うめ課では都内で開催されるマラソン大会などに持ち込み、参加者に配るなどしている。
これら「機能」が梅の消費拡大につながり始めた。うめ課などの情報をもとにして、梅干しに含まれている「バニリン」にはダイエット効果があるというテレビ番組が放映されると、一気に注目を集めたのだ。このため2016年から2年連続で1世帯当たりの梅干し消費量が増え、「猛暑だった18年も熱中症対策で消費が伸びました」と田中課長は言う。
だが、全国の梅の栽培面積は1994年をピークに減り続けている。みなべ町はなんとか面積を増やし続けてきたが、それでも2011年で頭打ちになり、16年から減少傾向に転じた。「放棄地が出始めています」と田中課長は表情を曇らせる。
農業者団体らのアンケート調査では、町内の60歳以上の梅農家で後継者がいる人はわずか20%だ。「後継者なし」が40%、「候補はいるが未定」も40%と、極めて深刻な状況が浮かび上がっている。