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伝説の朝ドラ『おしん』で、容赦のない物語に視聴者がアツくなるのはなぜか

『なつぞら』の十勝が素敵なプロモーションビデオに見えてくる

2019/05/23
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 テレビをつけたら、若手イケメン俳優5人が笑顔で洗濯。そういえば、家庭用洗剤や調味料のCMで、女性がひとりで家事をしているバージョン、ほぼ見なくなった気がします。

 今や男性が家事を“手伝う”と口にしたり文字にしたりすれば炎上必至。当事者が“手伝う”って何事じゃゴラァ……ということなのでしょうが、昭和生まれにはなんだかいろいろ難しい。

 まあ「どこまでいっても渋谷は日本の東京」ってことですよbyけみお。あああーなにもう無理。

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www.の波の中でアツく語る視聴者続出のお化け番組

 と、家庭をはじめ、いろいろな局面で価値観のアップデートが求められるこの令和元年に、朝のNHKでおもしろい現象が起きています。

 NHKの新作朝ドラ『なつぞら』は1日に4回放送されますが、1番早い7時30分の回を見ようとNHK-BSプレミアムにチャンネルを合わせている視聴者の多くが、その前の時間帯、7時15分よりオンエアされている昭和の朝ドラにがっちりハマっているらしく。

 www.の波の中でアツく語る視聴者続出の伝説の朝ドラ『おしん』。今から36年前、1983年4月から1年に渡って放送され、平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%(ビデオリサーチ調べ)を叩き出したお化け番組です。

朝ドラ『おしん』のDVDのジャケット

『おしん』が放送された1983年といえば、東京ディズニーランドの開業でテーマパーク、アトラクションという概念が日本に持ち込まれ、任天堂はファミコンを発売。街中にチェッカーズと中森明菜の曲が溢れて、エンタメ界も経済もイケイケだった時代。

 そんな中、明治時代に貧しい奉公人からスタートし、のちにスーパーのチェーン展開で成功する女性の一代記を描いた『おしん』が世間に与えた影響は多大なものでした。

 政治家や経済界のトップがことあるごとに『おしん』を持ちだし、それに対して脚本を担当した橋田壽賀子氏が「教科書のような話を書いたつもりはないので、政治家や財界人が訓示に引用するのには、違和感を覚えた」とインタビューで語り、『おしん』の“しん”は“辛抱のしん”とされたことにも「あれは辛抱を描いたドラマではありません」と反発。え、そうなの?

『おしん』といえば、なにより有名なのが、雪降る中、奉公に出される幼いおしん(小林綾子)がいかだに乗って川を下る姿を、母・ふじ(泉ピン子)が涙ながらに見守る場面。

 うん、私もてっきり、貧しい少女が辛抱して辛抱して大人になり、また耐える話かと思ってた。

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