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輸出の花形から輸入超過へ
2000年代に入って、趨勢が変わった。家庭用電気機器の輸出入の推移を見ると、2000年に逆転し、現在では輸出よりも輸入のほうが多くなっているのがわかる。
輸入が増加すること自体は、必ずしも悪いことではない。製造を海外拠点で行い、付加価値の高い部門だけが国内に残る「ファブレス化」を意味する場合もあるからである。その戦略で世界シェアを維持し、利益を確保していればよかったのだが、そうはならなかった。日本の電機製品の世界市場でのシェアは、平成の間に大きく低下してしまった。
家電業界では、冷蔵庫や洗濯機などの生活家電は白物(しろもの)、テレビやステレオなどのAV機器は黒物(くろもの)と総称される。
まず変わったのは、白物だった。はじめは海外で部品を生産していたのが、しだいに日本で設計した製品を海外で生産して輸入するようになり、さらには製品の企画開発段階から海外事業者に丸投げするようになった。丸投げされた側の企業は、当然のことながら、自社でも同様の製品を製造して、より安価に販売するようになる。
そうした製品を日本製品として販売することには、日本では意味があったが、海外では意味を認めてもらえなかった。高付加価値製品に特化して、家具として通用する家電を提供する欧米の企業と、安価な製品に特化して、次々と新製品を大量投入する中国企業との間に挟まれ、日本企業は立ち位置を失った。