1ページ目から読む
3/4ページ目

家電メーカーの脱・家電化

 そして、黒物。ネットで一時流行した「なぜ家電メーカーが赤字なのか一目でわかる画像」というのがある。

 これでもう説明は終了なのだが、いちおう補足すると、パソコンとガラケーの時代は、日本のメーカーもそれなりに戦えていた。しかし、ハードウェア重視でソフトウェア軽視、スペックは高くてもデザインや使い勝手で劣るという体質は変わらなかった。そこへスマートフォンへの移行が決定打となった。日本の得意としてきたデジタルカメラ・ビデオカメラ・オーディオ類などは、市場自体が丸ごとなくなってしまうほどの衝撃を受けた。

家電メーカーは大企業病を抱えていた

 ただ、不幸にはそれぞれ事情がある。業界の動向とはまた別に、家電メーカー各社も、お家騒動、人事抗争、同族経営の淀み、会計の粉飾など、それぞれに大企業病を抱えていた。「アップルのようになれなかったのか」などといわれても、そう簡単にいくものではない。「エコポイント」や「地デジ化」といった官製の販売促進策には、当然ながら長期的な衰退を押し止める効果はなかった。

ADVERTISEMENT

 日本の家電産業の惨状が一気に表面化したのは、2012年3月期の決算発表時であった。ソニー、パナソニック、シャープなどの家電大手各社が、一社あたり数千億円もの損失を計上し、世間に大きな衝撃を与えた(辻野、2016)。

 その後、パナソニックは「脱家電」を掲げて企業向け製品(B to B)の比率を上げる方向へかじを切り、2017年度の営業利益に占める家電事業の割合は3割を切った。シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)に買収されて再スタートを切った。かつてのサンヨーの電池はパナソニックへ、冷蔵庫は中国の海爾(ハイアール)へと引き継がれた。東芝は家電部門の株式のほとんどを中国の美的(マイディア)に売却して連結から切り離した。ソニーはゲームと音楽と金融の会社として復活を遂げ、家電事業はソニーブランドを維持できる高級品に絞って継続している。