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なぜわたしたちは捏造「神学者カール・レーフラー」の魅力に抗えないのか

「ニセ外国人御三家」から「ギルバート現象」へ

2019/05/25

 そんな欧米礼賛の風潮に、精一杯の努力で乗っかろうと挑んだのが「ショーンK」ことショーン・マクアードル川上だったろう。アイリッシュ系の父と日本人の母のあいだにNYで生まれ、ハーバードでMBAを取得した経営コンサルタント、という建て付けであった。実際は文春記者いわく父親は火野正平似の日本人であったりするなど、「週刊文春」によって偽りの経歴が暴かれてしまい(注3)、「クヒオ大佐」と同類に堕ちてしまうのだが。

自説の仮託が「捏造」になるまで

 かくのごとく、自説の仮託や成り上がるために「外国人」は使われる。それは世間が抱える欲望や劣等感と合わせ鏡かのようだ。

 またそうした欲望や劣等感が過度に振れるとき、捏造を生む。森口尚史によるiPS細胞事件などはそれだろう。千葉県のアパートで暮らし、大家さんに「東大教授になりました」と嘘(注4)を話した男は、やがて新聞記者にハーバード大の研究者を名乗って、iPS細胞を移植する治療に成功し、近く科学誌「ネイチャー・プロトコルズ」に掲載されると偽り、自分を売り込んだ。

森口尚史氏 ©時事通信社

 そうした系譜に「神学者カール・レーフラー」もいる。そこの核心には権威を作り出してでも、それにすがりたい性根がある。それは大衆娯楽の世界であれ、アカデミズムの世界であれ、変わりはないようだ。これをジョージ・ポットマン教授ならば……。

 

(注1)『ジョージ・ポットマンの平成史』大和書房2012年
(注2)別宮暖朗『帝国陸軍の栄光と転落』文藝春秋2010年
(注3)週刊文春2016年3月31日号
(注4)朝日新聞デジタル2012年10月13日

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