もっと“アレな”ドールは浙江省で作られる
いっぽう、TPEすら使わず、ビニール風船やキューピー人形みたいなチープなドールを作り続けているメーカーもまだまだ存在している。比較的高級感がある等身大人形を指す「ラブドール」ではなく、「ダッチワイフ」という表現を用いたほうがしっくりくるようなドールたちだ。
これらのドールは1体あたり、日本円で千円~数万円程度と激安である。いちばんチープなドール(すでに「ドール」と呼んでいいのかも不明)ともなれば、以下のような感じだ。
中国では市場の拡大に伴い、ラブドールやダッチワイフの不法投棄も社会問題化しており、用水路などに捨てられたドールを死体と勘違いした住民による通報で警察が出動する事件も相次いでいる。
同様の事件が多いためか、最近はみんな慣れっこになっているらしい。2017年3月には広東省広州市で住民から「川にダッチワイフが捨てられている」と通報があり、警察が当該の物体を引き上げてみたところ本物の遺棄死体だったという事件も起きている。
性と欲望と格差の中国
かつて計画生育政策(一人っ子政策)のもとで親による意図的な「産み分け」がなされた影響もあって、現在の中国では女性100人に対して男性が118人程度(他国であれば105人程度)と男女比が極端に偏っている。貧富の格差が大きいこともあって、一生結婚できない男性は3000万人規模にのぼるとも見られている。
EXDOLLや人造人科技などの高級メーカーの顧客層には、一種のコレクションや癒やしアイテムとしてドールを購入するような人たちも少なくない。なかにはコスプレが趣味の若い女性が、等身大の着せ替え人形として買う例すらある。だがいっぽう、ドールの価格が安価で造形がチャチになっていくほど、貧しい暮らしのなかで異性を求める人たちの生々しい欲望が垣間見えるようになる。
性と欲望の世界からも、中国社会の裏側がちょっとだけ見えてくるのだ。