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ブヨブヨの素材でナイスバディ系ドールを作る

 ここまで紹介した3社のドールは高級なシリコーン製なのだが、それよりも安価なTPE(熱可塑性エラストマー)を用いた製品を作っているメーカーも少なくない。TPEはゴムのような弾力性を持ちつつも、加熱によってプラスチックのように自由な成形ができる新素材だ。

 とはいえTPE製のドールはシリコーン製のドールと比べて、製品の表面に油が浮きやすかったり独特のニオイがあったり、ドールの顔の造形がやや大味になったり……といった問題が生まれやすい。ただ、そこそこの外見のクオリティを保ちつつ、シリコーン製の3分の1~半額くらいの製品(市場価格が十数万円程度)を作れるので、市場において一定の需要がある。

 TPE製のドールはシリコーン製と比べて触感がブヨブヨしているので、それを利用して「ぽっちゃり系」やナイスバディ系のドールを多く作っているメーカーもある。例えば広東省東莞市の俊影(JYDOLL)がそうだ。

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俊影の新製品であるぽっちゃりドール(右手前)。需要がどこまであるのかはわからないが、TPEの材質をフルに活かしたわがままボディである。左手奥はナイスバディ版のドールだ。2018年5月安田撮影

 また、広東省中山市の金三(WMDOLL)は、もともとマネキン会社からラブドール製造に鞍替えしたメーカーで、やはりTPE製のドールを作っている。ドールの造形はけっこう微妙なのだが、女社長の劉さんが相当なやり手であり、商売っ気が強い会社である。

金三の製品。価格は11万円くらいと、ラブドールとしてはかなり安いのだが、他社と比較すると顔立ちが大味な感じはある。2018年5月安田撮影
上海にて、人造人科技の一刀氏(左)、金三の劉氏(右)、さらにラブドール仙人(画面外)というメンバーで昼食。顔ぶれと話題がカオスすぎてごはんの味がわからない。2018年5月、人造人の社員撮影

 金三も、AI搭載のラブドールの商品化に成功したと主張しており、日本でも『SPA』や『クーリエ・ジャポン』など複数の媒体で紹介されている。ただ、私が実物を観察したり、YouTubeに上げられた動画(WM Doll Interview,Shanghai ADC Expo)を見たりするかぎり、会話AIの品質はあまり高くなさそうだ。

 中国のラブドールメーカーは、なぜか特定の省に集中するという特徴もある。EXDOLLとドール奇她がある北方の遼寧省と、人造人科技や俊影・金三などを擁する南方の広東省が、中国の主要なラブドールの「産地」である。さらに、後述するもっとチープなドールを作っているメーカーは、浙江省の寧波市や温州市に拠点を置いている例が多い。