こうした裁判は、被害者の間に格差を生じさせる
2018年には、ソウル市龍山区に日本統治時代の抗日運動の資料などを展示する「植民地歴史博物館」という施設をオープンさせた。まさに反日団体といえる民族問題研究所。その傘下でイ・ヒジャ氏は太平洋戦争被害者補償推進協議会という被害者団体を立ち上げ、徴用工裁判などを仕掛け始めるのだ。
こうした裁判の問題点は、被害者の間に不公平を生じさせることにある。イ・ヒジャ氏が率いる遺族会はメンバーが30名程度と、数ある遺族会のなかでもその規模は極めて小さい。例えば日本製鉄の裁判の原告は4名とごくわずか。彼らが賠償金を得たとしても、他の十数万人にも及ぶと予想されている徴用工問題は何一つ解決しないのだ。
ごく少数の声が大きい人間の主張がメインになってしまうというのは、慰安婦問題にも通じる日韓歴史認識問題の歪んだ構造だといえる。
「一部の人間だけがお金を受け取るというやり方にも批判が集まっています。彼女の活動には広がりがなく、いまも遺族会にとってイ・ヒジャ氏は裏切り者であり、“遺族会のユダ”でしかない。彼女は自分の功名心のために、徴用工裁判を行っているだけ。多くの被害者は取り残されてしまっている」(前出・遺族会幹部)
なぜ日韓関係を悪化させるような裁判を行うのか
日韓の歴史問題、補償問題は当初は被害者中心の活動だったのが、やがて市民運動家が主役となり反日活動へと変貌していったという歴史がある。イ・ヒジャ氏もまた、被害者の立場から市民運動家へと転向していった一人だった。
「市民運動家らの理屈には納得できないものが多くあります。例えば日本軍に徴用された韓国人の軍人、軍属に対して彼らは冷淡なのです。反日を掲げる市民運動家は、軍人、軍属は日本軍の協力者で“親日”というレッテルを貼って差別をしています。
戦地に送られた身体を張った軍人、軍属も、工場等で働かされた徴用工も同じような境遇にあった人達なはず。しかし、市民運動家たちは『無理矢理奴隷労働をさせられた徴用工のほうが軍人よりステータスが上なんだ』と語り、反日を煽るために徴用工問題を主体とし始めたのです」(韓国人ジャーナリスト)
その主張は被害者を慮ったものでは決してない。イ・ヒジャ氏は慰安婦問題では「日本の汚い金は受取るな」と主張した一方で、徴用工裁判では日本企業から金を強引に得ようとする。彼女の主張が、反日思想に囚われた矛盾だらけのものであることは明白であろう。
その目的はどこにあるのか。イ・ヒジャ氏を直撃して話を聞いた。
――なぜ日韓関係を悪化させるような裁判を行うのか。
「日本がすべて終わったからといって終わるものではない。しかし、日本とはもっとも近い国であり、良い関係にならなければならないと思う。その裁判によって韓日関係が悪化したというのは、矛盾する質問だ。被害者は日本が作ったからだ」
――太平洋戦争犠牲者遺族会でトラブルを起こしていたのは本当か?
「そんなことはまったくない。私は今まで自分のお金を使いながら30年以上活動を行っている。トラブルがあったら、こんなことはできない。そんな質問は初めて聞く」
徴用工判決は感情論に流されやすい韓国司法の歪みを浮き彫りにした。そうしたなか韓国メディアは、“遺族会のユダ”を反日女性闘士として持ち上げ続けているのだ。
次回は常に被害者の声を蔑ろにしてきた、韓国社会の歪な実体を明らかにしたい。