韓国内で徴用工裁判の“ジャンヌダルク”と評される女性がいる。

 イ・ヒジャ(李熙子)・太平洋戦争被害者補償推進協議会の共同代表だ。彼女は、日本製鉄や不二越相手の裁判を支援してきた。

 先の5月1日、日本企業への賠償命令が相次ぐ徴用工裁判において、原告側が差押を行っていた日本製鉄(旧新日鉄住金)と不二越の資産の売却命令を裁判所に申請したことを明らかにした。

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「資産売却には3ヶ月ほどの時間がかかるといわれており、このままですと8月にも差押資産の現金化が実現する見通しです」(ソウル特派員)

“イ・ヒジャ女史”とメディアでは賛美されている

韓国の国立墓地「望郷の丘」にある父親の墓を参るイ・ヒジャ氏(左) ©共同通信社

 一連の動きについて日本政府は「日本企業の資産が不当に売却される事態となれば断じて受け入れられない。事態を深刻に捉えている」と強く抗議し、日韓関係は破綻寸前という状況まで悪化している。

 こうした裁判を主導したのがイ・ヒジャ氏だった。強い言葉で世論を煽るそのスタイルは、さしずめ“韓国の福島瑞穂”といったところだろうか。だが、その影響力は絶大だ。

「30年間日本に行ったり来たりしながら戦ってきた者として本当に嬉しい。今になって植民地支配から脱したような気分です」

「日本の安倍首相は『1965年の請求権協定で終わった』というが、当時、被害者たちには協定をすると知らせなかった。日本のマスコミは安倍首相に『このように協定すると被害者に一言でも言及したのか』と質問すべきだ」

 彼女は徴用工裁判についてコメントを求められると、厳しく日本を非難し続けた。その反日的な言動は、韓国内で大々的に報道され、“イ・ヒジャ女史”とメディアでは賛美されているのだ。

「彼女は裏切り者なのです」

 日韓を往復しながら闘争を続けてきたと語るイ・ヒジャ氏。しかし、その経歴を辿ってみると、彼女の行動の根本は、被害者救済というスタンスではないことがわかる。

「彼女は裏切り者なのです」

 こう指摘するのは太平洋戦争犠牲者遺族会(以下、遺族会)の幹部だ。遺族会は、1990年代から慰安婦問題や徴用工問題など歴史認識問題にも積極的に取組んできた団体だ。数ある遺族会のなかでも「本家」と呼ばれる組織で、代表のヤン・スニム氏の名前は日本でも広く知られている。

 そしてイ・ヒジャ氏も、もともとは遺族会の幹部として活動していた。彼女自身も父親が日本軍軍属で中国において戦死したと周囲には話していた。