日本の防衛政策を支えるのは"国民の政治参加"
新元号「令和」が発表されたその日に退任した自衛隊の前のトップ・河野克俊前統合幕僚長は、国民と自衛隊の関係について次のように語った。
「防衛政策においても自衛隊においても、政治責任を負えるのは内閣総理大臣か各大臣であって、われわれは政治責任を負いたくても負えません。ミッションを与えられたらやりますが、それは厳密なシビリアンコントロールのもと、政治の判断に従ってやるんです。そこは絶対に踏み外してはいけない。それは、その政治の裏にいるのが国民だからです。国民が国会議員を選び、政府を選ぶわけですから。したがって、国民が政治参加することこそがシビリアンコントロールを機能させる大きな要因になると思っています」
「自衛隊に何を担わせるのか」を決定していく国民の責務
安全保障環境の変化に合わせて、その実態も変化させてきた自衛隊。それはすなわち、日本の掲げる“専守防衛”の実態が変化してきたことに他ならない。しかしその変化を、私たちはどれほど把握し、理解してきたのだろうか。
イラク戦争の後に派遣された南スーダンPKOでは、宿営地近くで大規模な武力衝突が発生、遺書をしたためた隊員もいたほどに苛烈な任務を体験している。しかし政府は、「法的な意味での戦闘行為はなかった」と説明した。さらに、現地の実態を記録した日報が隠蔽され、国民は意図的にその内実から遠ざけられた。河野の言う通り、シビリアンコントロールを機能させるために「政治参加」するには、情報が十分には提供されていないのが現状だ。
それでも私たちには、自衛隊に何を担わせるのか判断し、意思を示していく責務がある。
安全保障環境の変化に合わせて、その実態がこれまでと大きく変わる可能性のあることは平成の30年が実証した。これから「専守防衛」の組織として、この国のひとつの形を現してきた自衛隊が担うべきことは何か。変わった後に「知らなかった」としないためにも、国民ひとりひとりの声の重みは、ますます増していると感じる。
INFORMATION
NHK 平成史スクープドキュメント 第7回「自衛隊 変貌の30年~幹部たちの告白~」
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2019097877SA000/