写真家の宮本隆司さんは、1980年代から建築空間を題材に都市の変容や崩壊を撮影し、「建築の黙示録」や「九龍城砦」などの作品で高い評価を得た。現在「いまだ見えざるところ」と題された個展が開催中だ。美術館での個展は15年ぶりとなる。

宮本隆司さん

「今回の展覧会では、写真家としての歩みを一種の私的な物語として構成したいと思いました。そこで今まであまり見せていない仕事に力点を置きました。例えば1996年にネパールの秘境ムスタンにある城砦都市ロー・マンタンで撮影した作品、90年代にアジアの各地の街を撮った「東方の市(まち)」のシリーズなども展示します」

 なかでも奄美群島の徳之島で撮影した一連の写真は過去に徳之島でのみ作品として発表された。徳之島は宮本さんの両親の出身地。2014年には「徳之島アートプロジェクト」という現代アートの展覧会を企画・運営し、自らも作家として出品するなど、島の人々との関わりも深い。徳之島の風景や暮らしを撮ることは、自らのルーツを見つめ直すことにも繋がったという。

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「あらかじめコンセプトを立てて撮影するのではなく、半ばプライベートな営みとして撮った写真も数多くあります。それらを通じて、島で暮らす人々の素朴な共同体のあり方に目を向けています」

INFORMATION

「宮本隆司 いまだ見えざるところ」展
7月15日まで東京都写真美術館にて。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3408.html
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて「建築の黙示録」展も6月15日まで開催中
https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/19975/