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連載テレビ健康診断

大家族「石田さんチ」を見ると、なぜ息苦しくなってしまうのか――青木るえか「テレビ健康診断」

『結婚40年!大家族石田さんチ 子ども達からの感謝状』(日本テレビ系)

2019/06/01

 昔は三好さんとか青木さんとか「子だくさん大家族番組」が乱立してたが、今は石田さんがしぶとく残っている。『結婚40年!大家族石田さんチ 子ども達からの感謝状』。

 大家族モノはヤンキー文化礼賛(やんちゃするけど根は保守的)なので敬遠していたが、この「石田さんチ」、なんだか引きこまれて最後まで見てしまった。

密着取材23年目

 初回放映から二十年、そりゃあ、両親および七男二女のゴチャゴチャな家族もトシくって、結婚やら独立やら転職やらクビやら病気やら介護やらという生活。明日の暮らしに困るというほどじゃないが先のことはあんまり考えないタイプの一家。石田さん夫婦は介護問題がらみで別居して、そのせいだけではなく夫婦仲はビミョーになってる。まさに高齢社会日本の縮図!

 というような感慨とはまた別の「思わず引きこまれる理由」があった。

 どんなプロでもシロウトでも、カメラの前にいる時は自然「ではありえない」。完璧な隠し撮りでない限り、どれほど自然に見えたって制作者にも出演者にも「演出」が入り込む(猫ですらカメラの前では芝居する)。真面目なドキュメンタリーでもテレビ番組として放映された時点で「ヤラセじゃないがリアルでもないテレビ世界」だ。安全な他人事(ひとごと)。

 が、石田さんチ。お父さんが次女と猫と住んでコンビニ惣菜食ってる家も、長男一家のコタツ部屋も、他の息子の日々の生活も、ものすごい「素」。お父さんは常にカメラを意識した口調(甘えと威張りの混じった芝居じみたしゃべり方)だけど、お父さんきっとカメラがなくてもこういう人。お母さんは完全にカメラなど意に介さぬ。両親だけじゃなく子どもたちも、他人である長男のヨメさんに至るまで「カメラがあってもなくてもこの人らはきっとこの調子」、そのリアルさに巻き込まれて息苦しくなってくる。この感じは、石田家と日テレの二十年間に培われた信頼感から生じるのか、いや、たぶん石田家の人の特性のような気がする。やはり選ばれた人たちなのだ。

 番組ラストは、子どもたちが計画した両親のルビー婚記念家族旅行。男どもと母がふざけながら露天風呂に入り、ホテルの食事の席で、「父ちゃん母ちゃんありがとう」「オレ(父)はこれから墓に向かって歩いていく!」などと「最後はホロリとイイ話」的に締められていたが、やはり「テレビ世界」ではなく、今そこでやってるような、なんなら自分も末席にいるような気になり、お父さんの言動からほんのり漂うモラハラ臭などで「この父ちゃんの面倒見るのか……」とどんより重い気持ちになってしまった。ある意味パワーのある番組だった。今後もまだ続くらしい。勘弁してほしい。

INFORMATION

『結婚40年!大家族石田さんチ 子ども達からの感謝状』
日本テレビ系 5/16放送