「頭痛がしたらこめかみに“焼きごて”を押し当てて解決」「大量に出血した患者にはブランデーを生で注射」「ヤギの睾丸を身体に移植してアンチエイジング」かつて実際に行なわれていた仰天エピソードがツイッターで話題になった『世にも危険な医療の世界史』を、大阪大学医学部教授で病理学の専門家、仲野徹氏が紹介!

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 あぁ、いまの世に生きていてよかった。この本を読んだ誰もがそう思うはずだ。かつておこなわれたことのある医療のオンパレード。いや、はたして医療といっていいのだろうか。そのほとんどは強烈な痛みや苦痛をもたらすものばかり。いやはや、恐ろしい時代があったものだ。

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ロシア製の電気シャワー。見るからに怪しいが、電気を身体に流すことで万病が治ると、長年世界中で信じられていた。18世紀のフランスでは、「街中のみんなが感電したがっている」と、ある内科医が書き残している。

 第1部『元素』と第2部『植物と土』に記載されているのは、水銀、アンチモン、ヒ素、金、ラジウムとラドン、アヘン、ストリキニーネ、タバコ、コカイン、アルコール、土(!)。薬というよりむしろ毒物で、元気な人でも病気になってしまう。しかし、どうしてこのような物が医療に使われたのだろう?