豚骨、醤油、麺、スープ……。来日して5カ月、彼の周りではラーメンの話題が途絶えることがない。発端は、入団会見でラーメンの話題に触れたことであった。それ以来、彼のラーメンの話題はスポーツ紙面を頻繁に彩ることになる。
新外国人・カイル・レグナルトの快進撃は続いている。野球の話である。激しい外国人枠争いに勝ち、開幕一軍入りを果たし、リリーフで27試合に投げ、防御率0.30は圧巻だ。ただ、どれだけ活躍しても彼の飾らない人柄は変わらない。ラーメンの話題も尽きることがなかった。
しかし、季節は移ろっている。いつまでもラーメンだけではない。気温30度を超えた今、レグナルトの視界は次なるゾーンに広がっている。
冷たい麺である。「この前初めて食べましたが、美味しかったよ。竹のザルに盛ってあるのも面白かったです」。話を総合すると、つけ麺のようである。レグナルトは日本へのアジャストどころか、季節感すらも身に着けて、夏に挑もうとしている。
「いつも心をオープンに」 レグナルトの野球観と人生観
「フロリダの湿度の高い夏も、ラスベガスのドライな夏も経験しているからね。夏は好きだよ。シーズンオフから、シーズン後半に力を出せることを考えてやってきました。後半戦で力を出すことが大事だからね」。
レグナルトがますます輝くのは、ここからのようである。「夏は体が動くので、腕の振りのスピードが良くなります。そうなると、ストレートとカーブの判別も難しくなるので、一層に効果的なピッチングができると思います」。
シーズン序盤は、この宝刀を多くは抜かなかった。「ストレートで押すことができていましたし、(カーブを)待っているような打者のスイングもあったので、直球中心だったのかもしれません。球が速いから、良く曲がるから抑えられる。そういうことではないと思います。100マイル(160キロ)のボールを投げても打たれる場面はあります。むしろ、何かしら打者が打ちづらい要素を入れることの方を大事に考えています」。
なんという実利主義だ。あれだけの魔球を持ちながらも、クレバーにアウトを積み重ねる道を模索しているのである。しかも、環境の変化はもちろん、季節の変化も受け入れながら、良いパフォーマンスを続けている。
変化を拒むか、受け入れるか。レグナルトの野球観と人生観は、我々に多くのことを教えてくれる。「いつも心をオープンに、異文化も受け入れる気持ちを持つようにしています。自分たちに普通のことが他所ではエキサイティングであったりします。そういう違いを楽しむようにしています。その気持ちは野球につながるところがあるように思います」。