あきよしりかこ/兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。ロヨラ・メリマウント大学院にて映画・TV製作修士号取得。2008年「雪の花」で第3回Yahoo! JAPAN文学賞受賞。『暗黒女子』が今年4月映画化。他著に『聖母』『自殺予定日』『絶対正義』など。

「婚活ブームに一石を投じるという大げさなものではないですが、いまの女性の実情を掘り下げて描きたかったんです」

『暗黒女子』や『聖母』が大ヒットし、イヤミスの新旗手として注目を集めている秋吉理香子さん。最新長編『サイレンス』は、婚活中の女性が主人公だ。

「深雪(みゆき)は34歳で、結婚を一番あせる時期です。現在の彼氏を逃したら……と思う一方、マンションを買ったり、1人で生きていく覚悟はできていない。私自身、その間で揺れました」

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 舞台は新潟本土の港からフェリーで2時間、人口300人ほどの孤島「雪之島(ゆきのしま)」。

 深雪はアイドルを夢みて島を離れ、東京の芸能事務所でマネージャーをしている。広告代理店勤務の俊亜貴(としあき)は、つきあって6年なのに、結婚の話を全然しない。女子会で先輩からアドバイスされた深雪は、意を決して迫り、年末に2人で雪之島に住む両親へ挨拶に行くことに。だが、深雪の実家へ泊まった後、俊亜貴は失踪してしまう。2人は果たして結婚できるのか。

 雪深い島出身の深雪に対して、俊亜貴は東京の裕福な家で生まれ育った。結婚が近づくにつれて、2人の違いがあらわになっていく。

「生まれ育った家族と積み上げてきた歴史があるわけで、それが違う2人が一緒に生活するのは簡単じゃないんです。また、結婚は本人同士さえよければいいと言われますが、現実には家同士がうまくいかず、夫婦の関係も悪化することが私のまわりでも結構あります」

 婚活中の親友が「彼が田舎の地主の家でラッキー」と喜んでいたら、それを聞いた秋吉さんの母親は「大変だよ」と諭したという。

「母は大阪の都会の人ですが、パイロットをしていた父は茨城県の田舎出身。母はとても苦労したそうです。ふだん都会的な父は、実家に帰ると豹変して『お土産を配ったのか』とか小さなことを気にする。幼い頃から不思議で、地方から都会へ出てきた人たちの業(ごう)を描きたいと考えていました」

 秋吉さんは中学1年の頃、作家になろうと思った。

「太宰治や三島由紀夫の作品を読んで、人間のきたない部分を描いていることに衝撃を受けて、私も小説を書きたくなったんです」

 川上弘美さんや小川洋子さん、多和田葉子さんの作品を愛読。純文学志向だったが、編集者から「ミステリーが向いている」と言われ、ミステリーへ転向した。

「『サイレンス』はこれまでの作品とは違って、純文学風のサスペンスです」

「しまたまさん」という神様に護られた雪深い孤島「雪之島」。深雪はアイドルを目指して島を離れたが、夢をあきらめて芸能事務所で働いている。つきあって6年の彼氏と2人で、年末に深雪の両親に挨拶へ行くことに。だが実家に泊まった後、彼氏が失踪……。深雪たちは島を脱出し、東京で無事結婚できるのか。

サイレンス

秋吉 理香子(著)

文藝春秋
2017年1月26日 発売

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