学校法人橘学苑(神奈川県横浜市)に対して、5月27日付で鶴見労働基準監督署が、残業代未払いなどで是正勧告ならびに指導票を出していたことが「文春オンライン」編集部の取材でわかった。
「労基署は、4月半ばに調査に入っています。休日出勤の賃金が『一律3時間』の手当で処理されていたことが、労働基準法37条(休日・深夜労働の割増賃金)に違反すると是正勧告の対象となりました。入試関係や進路担当などの職員は労働時間に見合った賃金が支払われていましたが、特定の仕事については朝から晩まで働いても、一律3時間とカウントされていたのです。その点について、事前の説明は一切ありませんでした」(橘学苑元教職員)
保護者会では「逃げるな!」と怒号が飛ぶ
橘学苑は、「メザシの土光さん」として親しまれ、東芝社長、経団連会長などを歴任した土光敏夫氏が理事長を務めていた学校としても有名だ。もともとは土光氏の母親が創立し、現在は息子の陽一郎氏が理事長に就いている。しかし、最近では不名誉な話題でニュースを賑わすことが多かった。
橘学苑が運営する中高一貫校では、近年、教員の大量退職が問題となっている。今年4月、共同通信が「昨年度までの6年間で120人が退職している」と報じた後に行われた保護者会では、学校側の説明に反発した保護者から「逃げるな!」と怒号が飛ぶなど、大荒れとなった。さらには、神奈川県が同校の労働環境について調査を行うまでに至っている。
しかし、冒頭の「是正勧告」は氷山の一角だという。
「他にも給与の支給遅れやサービス残業、勤務時間の改ざんなど、“ブラック”な労働環境は枚挙にいとまがありません。なによりも職場の雰囲気を悪くしているのは、『いつ雇い止めになるかわからない』という不安定な雇用契約です。現在、教職員の約半数が非正規雇用となっています」(前出・元教職員)