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「天安門30周年」直前にツイッターが凍結された中国ライターの顛末

2019/06/10
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「八九六四」をアカウント名に入れていた

 事実、反体制派の亡命中国人経済学者で28.5万人のフォロワーがいる夏業良、評論家でフォロワー数10万人以上の郭宝勝、在米中国人ジャーナリストでフォロワー数が約3万人の西諾など、中国政府にとって都合が悪そうな人たちのアカウントはいずれも凍結されている(アメリカの中国人権問題ウォッチサイト『CHINA CHANGE』の設立者Yaxue Caoのツイート報告による。現在はいずれも凍結解除)。

 また、個人的に身近なところでは、亡命民主活動家の顔伯鈞(@Yanbojun)のアカウントも凍結されていた。過去、私は彼の逃亡記『「暗黒・中国」からの脱出』(文春新書)を訳したことがあるほか、『文春オンライン』上でも彼のタイ台湾での亡命生活をレポートしてきた。

 私自身、天安門事件をテーマにした『八九六四』という著書が大宅賞と城山賞を受賞したことで、アカウント名にも書名を入れていた。事件発生の日付である八九六四(1989年6月4日)は、中国国内では政治的に非常に重大なタブーとしてみなされる数字だ。

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民主化を求めていたデモ隊との衝突が過熱。人民解放軍が武力行使し、1989年6月4日の未明にかけて多数の死傷者を出した ©AFLO

天安門事件リーダーは凍結されていないナゾ

 もっとも、首をかしげることもあった。今回の騒動で、日本では私だけではなく中国に詳しい複数のアカウントが一時凍結されていたが、たとえ私と相互フォローの関係にあっても、凍結対象になったのはオタク系の人や普通の主婦など、政治的にあまり過激ではないアカウントが多かったのである。

 加えて、ブロックチェーン専門家の楠正憲氏のように、私と一切接点がなく本人も中国と無関係と思われる人のアカウントも凍結されている。逆に石平氏や福島香織氏のような、私よりもずっと中国に強硬な識者たちのアカウントは無事であった。

 また、中国当局にとって都合が悪い在外中国人でも、往年の天安門リーダーの筆頭格である王丹や、香港の雨傘革命のリーダーの一人だった周庭といった有名どころのアカウントは、なぜか凍結されていなかった。