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就職氷河期世代の家賃滞納 41歳独身男性は「親には頼らない」と叫んだ

2019/06/15
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「この歳まで一度も正社員として働いた経験がないの?」

<希望していた就職先はなく、ようやく見つけられたのは製造業の工員。しかも正社員ではなく、派遣社員。一流ではないものの大学の経済学部を卒業して、 どうして派遣社員? と思いましたが、求人そのものがないから仕方がありません。

 保証はないものの、なんとか自立していけるだけの賃金を稼ぐことができました。まずはとりあえず家を出て、それから自分の好きな仕事をみつければいい、単純にそう考えていました。当時はいつか正社員になれる、そう思っていました。

 ところが現実は違いました。なんどか職場を変えましたが、就職できたのはいつも派遣。退職の理由は人間関係が嫌だったり、労働環境が悪かったり、いろいろです。面接のたびに「この歳まで一度も正社員として働いた経験がないの?」という言葉を浴びせられました。

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 別に好んで派遣ばかりを選んだわけじゃない。新卒時に正社員の求人がなくて、仕方がなく派遣になっただけなんですよ。面接官にはそう言いかえしてやりたかったけど、どうせ言っても分かってもらえませんからね。諦めることだけが上手になりました。>

大卒求人倍率の変遷。就職氷河期は1993年~2004年ごろ高校や大学を卒業した。2000年には求人倍率が1.0を割り込んだ ©共同通信社

唯一の息抜きは、たまに立ち飲み屋に行くくらい

<結局いつまでたっても派遣社員。月々の給与はどこでもだいたい20万円ほど。税金払って、家賃払って、生活費払えば終わりですよ。生きてはいけるけど、貯金なんて絶対にできない。いつもぎりぎりの生活です。景気は回復しているはずなのに、その実感はまったく感じられませんでした。

 贅沢なんてしていません。唯一の息抜きといえば、たまに立ち飲み屋に行くくらい。彼女なんて、いるはずがないです。

 今のマンションは、ちょっと収入が多かったときに引越したところ。でもそこはあまりに劣悪な職場で、病気になりそうだったから辞めました。転職したら今の収入に下がってしまった。正直、本当にカツカツの生活でした。だからもう少し手取りを増やそうと思ったんです。そうでないと安い部屋に引越しもできないから。景気も良くなってきたから、大丈夫だろうと思っていました。

 でも、どこでも同じことを言われます。 「今まで一度も正社員で働いたことないの?」って。>

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