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「生活保護ってどうやったら受けられますか?」

<これ、俺の責任ですか? 仕事が決まらないから、貯金もないし、家賃を払えなくなって。もう生活保護でもなんでもいいです。だってどうせ履歴書出したって、同じ結果だから。 卒業以来、実家にはほとんど寄りついていないから。ずっと派遣で結婚もできず、恥ずかしいって言う親を頼りたくないです。 生活保護ってどうやったら受けられますか?>

 結局、巧さんはその後も家賃を滞納し続け、裁判で「明け渡せ」の判決が言い渡されました。そして強制執行の催告の後に、生活保護を申請したようですが、1カ月後に部屋から追い出される巧さんには「緊急性がある」として申請はすんなり受理。生活保護制度の中から、転居費用や部屋を借りる初期費用等も支給されました。

 部屋は築古の木造アパートになりましたが、生活保護受給費で十分に生活していけます。

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「今までまともに働いてないって、自分を全否定された気になって、就活しようと思うと動悸が止まらない。ちょっと鬱気味なんですかね。自分は誰からも必要とされていない気がして、どうしてもやる気になれません。当面、このままでいいかな。 夢? 持てるわけないじゃないですか」

 巧さんのパターンは少し極端な例かもしれませんが、最初の物件選びを誤って、マイナスのスパイラルに陥っていく新社会人は実は珍しくありません。

©iStock.com

 最初は生活費にどれくらいかかるか実感もない上、夢見ていたひとり暮らしとあって、ちょっと背伸びした物件を借りてしまいがちです。けれど生活費は想像以上にかかるのが常なので、家賃の負担が大きければ、ギリギリの生活を送ることになってしまいます。

 あまりにギリギリの生活の場合、家賃滞納は目の前の危機です。ひとたび給与の支払いが遅れたら、病気になったら、怪我をしたら、転職がスムーズにいかなければ……そんなありふれた「もしも」の事態で、即座に生活は破綻します。

 身の丈を超えた物件選びが、その後の運命を大きく左右してしまう可能性は決して小さくないのです。

 また就職氷河期世代の家賃滞納でよく見られるのが「親との不仲」です。親の世代は高度経済成長期を経験しており「就職はできて当たり前」と考えてしまう。だから子どもたちが就職で悩んでいても「お前の努力が足りないからだろう」「派遣の仕事は恥ずかしい」と突き放してしまうようです。親と一緒に住んで、自分のお小遣いと親へ食費を払うということであれば、生活は成り立つのにというケースもたくさん見てきましたが、「親を頼れない」「親と一緒に住めない」と言います。就職氷河期世代の悩みへの理解が親の世代にも広がって欲しいと思っています。

家賃滞納という貧困 (ポプラ新書)

太田垣 章子

ポプラ社

2019年2月8日 発売