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連載この人のスケジュール表

「なるほど」に「ですね」がつくと、急に信用できなくなるのはなぜか?

野澤幸司――この人のスケジュール表

2019/06/17
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 コピーライターの野澤幸司さんが『妄想国語辞典』を出版した。世の中にはまだないけれど、これから生まれてくるかもしれない日本語を集めた辞典だ。たとえば「病み上がりの生牡蠣」。意味は「賭けに出ること」とある。

野澤幸司さん

「自分の経験をもとに、こんな言葉があったらな、という妄想から生み出しました。『あるある』と思ってくれる人もいれば、まったく共感しない人もいると思います。でも以前、この言葉たちの展示会をしたときのこと。一人の女性が、展示された言葉を見て笑い『明日から育児を頑張れそうです』と言ってくれました。個人的な妄想でも、誰かを少しだけ前向きにできるのかもしれない、と感じました」

 日常の中で引っかかった言葉も辞典には収録されている。

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「『なるほどですね』は気になりますね。付けた意味は『何の関心もないこと』です。『なるほど』は信じていいけれど『ですね』がつくと事態は急変します」

 野澤さんは学生時代、ラジオの「ハガキ職人」だった。

「コピーライターの仕事も、みんなが感じていることにピッタリな言葉を与えること。そう考えると昔と今と、やっていることはそんなに変わらないのかもしれません」

妄想国語辞典

野澤 幸司

扶桑社

2019年6月2日 発売

「なるほど」に「ですね」がつくと、急に信用できなくなるのはなぜか?

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