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故ダイアナ妃にも見えたメラニア夫人のファッション

 一方のメラニア夫人は完璧なファッションを見せた。宮中晩餐会では長い正装用ドレスであるガウンをまとった。ニューヨークのデザイナー、ジェイ・メンデルのデザイン。日本を意識したのだろうか、薄桜色の生地に羽が刺繍されている。バッキンガム宮殿の晩餐会では一転、仏ディオールの象牙色のノースリーブドレスで、正式礼装に合わせて肘まである白手袋をつけた。英女王も白手袋だった。

ニューヨークのデザイナーのガウンをまとったメラニア夫人 宮内庁提供

 メラニア夫人が英国王室の格式に合わせて服装を考えていたのは、英国に到着した日の歓迎式典でも明らかだった。紺のリボンを巻いたツバの広い白い帽子に、服は伊ドルチェ&ガッバーナのカッチリした白のワンピース。襟とベルトは帽子のリボンと同じ紺色で、広いツバで隠れた顔もあって、引いた写真では故ダイアナ妃にも見えた。

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故・ダイアナ妃を彷彿とさせるファッション ©getty

日本では無帽で長い髪をなびかせていた

 宮中・東庭で行われた歓迎式典では、皇后をはじめ日本側列席者の女性ほぼ全員が帽子を被っていたのに対し、メラニア夫人は無帽で、長い髪を風に揺らせていた。花の刺繍が入った清楚な白いドレスは米デザイナーのキャロリーナ・ヘレラのプレタポルテ(高級既製服)で、靴は赤。日の丸カラーを意識した組み合わせだった。格式や作法よりも、より自然なファッションを心がけたのかも知れない。

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メラニア夫人 無帽は無謀? ©JMPA

 トランプ大統領夫妻は同じ立憲君主国でも、皇室と英王室はまた違うことを感じとったに違いない。世俗的な英王室に対して、より精神的で宗教的要素が漂う皇室。バッキンガム宮殿は絵や彫刻や装飾を重ねる足し算の美だが、宮中は何もない空間に一点、アクセントとなる墨絵が掛かるか、品のいい花瓶が置いてあるだけ。引き算の美だ。トランプ大統領は宮殿内を歩きながら天皇に「宮殿は本当に美しい」と語ったという。

宮中晩餐会が開かれる宮殿の豊明殿 宮内庁提供

トランプ大統領訪問が照らす日本の問題点

 同大統領のロンドン滞在中、連日、反トランプのデモがあり、大統領を未熟な赤ん坊に例えた巨大バルーン「トランプ・ベビー」も空に浮かんだ。その点、日本ではデモもなく、心安らかに過ごせただろう。ただ大統領夫妻は英国訪問初日、ウェストミンスター寺院内にある無名戦士の墓に詣で、献花と黙とうを行ったのに対し、日本ではこのような儀式は行われなかった。外国を訪問した国賓が、その国のために命を落とした人を祀る記念碑や追悼施設を訪れ、黙とうするのは国際的慣行であり、相互主義になっている。しかし靖国神社はA級戦犯が祀られ、米大統領として行けない。靖国神社に代わる国立の施設はまだない。トランプ大統領はどのように感じただろう。

©JMPA