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「貧困」を「普通」に見せるために「大切」を切り売りする女性たち

 そうするしかない人が増えていく日本のシステムも理解出来た。これじゃあ「奨学金」じゃなく「性(しょう)学金」じゃないかと、憤りと共に、くだらない言葉とため息も出る。

 この本の中では「貧困」というものを二種類に分けている。「絶対的貧困」と「相対的貧困」。「絶対的貧困」というのは、衣食住にも不自由して餓死していく貧困で、貧困と言われるとこれをイメージすると思うのだが、「相対的貧困」とは、年122万円未満で生活する人のことらしい。

 相対的貧困の女性の中には、大学にも通うし、スマホも持っている人も多い。その時点で「スマホ持ってたら貧困じゃないじゃないか?」と考える人が多いだろう。だが違うのだ。そこが一番の問題である。本当は「貧困」なのだが、「普通」に見せるために、自分の「大切」を切り売りしてしまう。その「大切」の切り売りを求める大人が列をなしてるから、「需要と供給」が成立してしまう。それがどんなに悪だろうが、そこに一度、「需要と供給」が成立してしまうと、社会から削除することは容易ではない。

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 いつから東京で普通に暮らすことがこんなに大変になったのだろう? 東京で「普通」に見せるために、ドーピングしないと生きていけない女性。きっと皆さんのすぐ近くにいる。

 読みましょう。まず。

なかむらあつひこ/1972年、東京都生まれ。ノンフィクションライター。貧困、介護、AV女優、風俗など、社会問題をフィールドに取材・執筆を続ける。著書に『AV女優消滅』など多数。

すずきおさむ/1972年、千葉県生まれ。放送作家。子供の貧困をテーマにした漫画『秘密のチャイハロ』の原作を手がけている。

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか

中村 淳彦

東洋経済新報社

2019年4月5日 発売